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一気に前向きになる円卓から、明日香と立花も声を上げる。
「オーダーしてくれたら、どんな珍しい食材だって仕入れてきてやろう。これは、腕が鳴るな―――」
「いや、珍味仕入れられても困るけど……」
いつもの活気が、白い円卓に波打つように広がっていく。
この空気を作ったのは、紛れもなく祥子の一言だろう。
(―――今の俺は、INFINITY∞の為に“何”が出来るだろう)
盛り上がるブレストルームの中、即答できずもどかしい気持ちを抱える七汐。
円卓を見渡しその表情を察した一矢は、七汐を名指しで指摘した。
「では、萩原辺りが桐島に続いて夢を叶えて卒業する役を担当してくれるかな」
「え？」
「そうなの？」
一矢の言葉で、注目を浴びる七汐は尚更に言葉を失い、一矢を睨んだ。
そんな睥睨など諸共せず、寧ろ楽しんでいるかの如く口角を上げる一矢と共に、「そいつは楽しみだ！」と洋平もグルとなって退路を断つ。
気付けば祥子も目を輝かせており、七汐の“宣言”に期待を寄せているようだ。
この状況……
盛り上がる場で、水を差すような事は言えない―――
七汐は意を決して口を開いた。
人間は目標などを書いたり公表したりすることで、それに対して責任を取ろうとする生き物である。これは科学的なエビデンスもあり、心理学用語では
「洋平さんに続けるよう、資格取得を目指します」
睦を始め、一部で「おぉぉ」と感嘆の声が漏れる。
人の前で宣言するのは、こうも恥ずかしい事なのか。
だが、言ったからには絶対合格せねばと気合も入るため、確かに宣言効果はありそうだ。
不思議な事に、資格取得の件を祥子以外には伝えていなかったはずなのに、何故か一矢は驚く様子もない。寧ろ、七汐に公言するよう根回ししたのは一矢だ。
「この流れだ、睦も何か宣言しときなさい」と、茶化されるように睦に注目を向けられた隙に、七汐はこっそりと一矢に問うた。
「何で知っているんですか――― 一矢さん」
「ん？何のことだい」
「とぼけないで下さい。俺、大学院の事はオーナー達にも言ってないのに」
オーナーには、時期を見て伝えるつもりでいた。それまでに、祥子が誰かに漏らすとも思えない。
七汐の追及に、一矢はニマリと意地悪い笑みを浮かべた。
「萩原君、洞察力が足らないね―――。君の上司、名前は何と言ったかな？」
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