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結論から言えば、
祥子や七汐の誕生日でもなければ、交際記念日でもない。
あれこれと記憶を辿ってみるが、その日に特別思い当たる節がない。
既にホテルのディナー予約まで押えて計画をしていたという事は、2月14日に何か意図があったのだろう―――。
だとすれば、少し申し訳なかった気もする。
「いや、ほら―――。うちら、交際しているわけだし、2月14日ならデートに誘っても不思議じゃないやろ？
それに、
「あ――――」
そう言う事……。
プロポーズを、“する”事に必死になり過ぎた七汐にとって、
”される”事は全く想定していなかった。
祥子も、七汐がプロポーズを断る事は想定しておらず
学業と仕事に忙しくなる七汐に変わり
来年度以降、七汐の両親への挨拶や両家の顔合わせ、結納の日取り等をあれこれと考えていたという。
プロポーズのその先を、彼女が真剣に考えてくれていた事は
正直凄く、嬉しかった。
「ディナーの予約してくれていたなら、その日は休み希望を入れるよ」
「うん、ありがとう」
「両親には紹介したいと思っていたし、予定を聞いておく。来月14日以降で」
「え、どうして？」
「2月14日に、プロポーズしてくれるんでしょ？祥子さんから」
あっさりとした七汐の返事とは逆に、あれこれと指を折る祥子の声からは、焦りが滲み出る。
「それは、そうだけど……。
話し合わなきゃいけない事は沢山あるの。皆に伝えるタイミングとか、入籍の事とか……。
七汐君長男やし、うちが嫁ぐ方がいいんよね？お家のしきたりとか形式とかあるのなら、そちらも聞いておかなきゃで。
来年は受験の事もあるやろ？七汐君の負担にならないように、出来るなら早く準備をした方が良いと思うの―――」
「入籍や結婚式の日取りなら、祥子さんが決めて良いよ。
萩原はしきたりとか格式ある家ではないし、継がなきゃいけない事もないから、
俺が婿入りでも構わない」
「なんか消極的やな……温度差感じるわ」
しゅんと下を向く祥子に柔らかな微笑を向け、七汐は彼女の額にキスをした。
今は、本音を語り合う時間。気がかりは、正直に伝えるのが二人の中の暗黙のルール。
だからきちんと、伝えておかなければ―――
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