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プロポーズした
祥子の本音を聴けるならこのタイミングだと、内心は少し緊張していた七汐。
折角だから新年のカウントダウンまでは起きていようと、布団の中で語る(心の)準備を整えていたというのに、肝心の祥子はスマートフォンの画面をスワイプさせ、カレンダー画面をじっと睨んでいる。
やはり―――期待したような“甘い時間”とはならないようだ。
「俺が欲しいって言ってくれたのに……用が済んだら放置?それとも、まだ足らない?」
カレンダー画面に夢中な祥子の視界を遮る様に、後ろからすっぽりと抱き寄せる。
それでもなおスマートフォンを手放さない祥子の肩越しに、七汐はぼんやりと光る画面を覗き込んだ。
「何の予定?」
「うーん……ご挨拶の」
「挨拶?」
祥子のカレンダー画面には、仕事の予定がぎっしりと書きこまれていた。
INFINITYの外交的な商談はリーダーである祥子や一矢が担っている。地区商工会への挨拶周り予定の確認だろうか……。
(それにしても、こんな時にしなくたって……)
ワザとらしく口を尖らせ不機嫌を露わにする七汐の腕の中で、彼女はくるりと体制を変えて七汐の方に向き直った。
そして、眩しくないようにと光度を下げた画面を共有する。
「本当は―――2月14日にプロポーズするつもりやってん」
(プロポーズ?)
「……誰に?」「七汐君しかおらんやろ」
―――寝ボケとん?
祥子からの鋭いツッコミに、そうだったと我に返る。
スクロールされたカレンダーには、2月14日の夜に近くのホテルディナーの予約が記載されていた。
この日は、夜勤を入れないようにと念を押すつもりだったという。
「逆プロポーズ、ってこと?」
「そう。七汐君、仕事柄指輪って抵抗あるやろうし―――うちも
―――先をこされてしもた。
「―――どうして2月14日なの?」
七汐の素朴な疑問に、祥子はきまりが悪そうに視線を逸らす。
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