＊ Two-faced 5 ＊ (ページ21)

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「冗談だよ。祥子さんのお願い―――聴くよ？」

「……何でも？」

「―――何でも、ではない。内容によります」

折角婚約を了承してもらったのだ。それを棄却するような内容ならば、当然受け入れられない。

七汐は挽き終えた珈琲豆をドリッパーに移しながら、食後の珈琲の用意を続ける。
祥子は隣で食器を洗いながら、ぞもぞと口ごもった。

少し、意地悪をし過ぎてしまっただろうか―――

それとも、そんなにも言いにくい事なのか。口ぶりから、彼女が既に“お願い事”を決めている事は察していたのだが。
珈琲を淹れる手を止め、なかなか“願い事”を口にしない彼女の肩に額を寄せて擦り寄った。

「俺に出来る事なら、なんだって叶えてみせます」

すると、たっぷりの逡巡を巡らせ
祥子はようやく口を開いた。

「じゃぁ。七汐君をください」

「―――……」

「あ―――「勿論。俺は、祥子さんのものです」」

彼女が否定を口にする前に、七汐は遮る様に言葉を重ねた。

消えそうなほど、小さな声で「そうじゃ……なくて」と反論しているが、
その“意味”を理解できない程、無粋ではない。

例え彼女の意図する事が違う意味だったとしても、七汐は自分に都合よく解釈するだろう。

「いーよ、祥子さん。大好き」

大晦日の夜
重ねた唇と祥子の腕に輝くエンゲージウォッチに誓約する

貴女の幸せを叶えてみせます――――と。

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