＊ Two-faced 5 ＊ (ページ3)

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先程搬送された患者、大町櫻は七汐が“未だ”会っていない I-nfinity∞(3-D)の住人だ。
喫煙者である大町は、３年前から食欲不振を訴えていたが、胃炎と診断され内服で対処療法を行っていた。
職場のバリウム健診で要検査となった事がきっかけで、再検査の末スキルス性胃がんが診断される。発見が早かった事が功を奏し、辛うじて手術適応となった。

その後、入退院を繰り返しながら術後補助化学療法を行っていたが、1年前に腹膜播種が見つかり次の段階への移行(緩和ケア)かと話していた矢先の事だった。

スキルス性胃がんは、低分化腺がんに分類され、胃がんの中では１割程と言われており、
独自の統計が十分でガイドラインに乏しいという、珍しいがんだ。
おまけに早期発見が難しく転移しやすいため、発見時は殆どステージⅣ(末期)の事が多い。

手術ができた事は(彼女はまだ)長く持った方なのかもしれない。

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あの日睦の部屋で、大町について相談を受けていた。

勿論“大町”という患者名を直接出された訳ではないし、七汐が聴かされたのは
『I-nfinity∞の住人が、がん治療を行っており、容態が思わしくない』という事だけだ。

大町の両親は遠方に住んでいるうえ色々あって疎遠だという。
その上、母親は足が悪くて車椅子生活を送っており、大町はがんである事を両親に話していないらしい。

そこには、思う所もあるが価値観も考え方も人それぞれである。
成人した大町が話したくないと決めたのなら、外野があれこれ口を出す必要もない。

何かあった時のキーパーソンとして、三笠夫婦が後見人代わりに受診に付き添っており、真司の手が開かない時は、真依が真矢の介助をして病院受診に付き添っていた関係で
“胃がん”や“抗がん剤治療”についての本を化学療法看護師の睦に借りに来ていたという。

その話を聴いてから、密かに真依の事も気に留めていた。
彼女はあまり自分を見せようとしない……だからこそ解り難いが
最近試作開発と言いながら、暇さへあれば遅くまで厨房に残っている姿を見かけるのは
洋平の退職を意識しての事だけではないだろう。