* ページ18
・
押し付けられたくまのぬいぐるみを両手で抱きながら、祥子が「お帰り?」を伝えると、
ふわふわとしたぬいぐるみの向こうから、「ただいまです」と 照れ笑いが降ってくる。
かと思えば、急に真剣な表情を見せる七汐に、祥子は一瞬、息を呑んだ。
「
「答え?」
藪から棒に突き付けられた問いかけに、祥子は小首を傾げる
意図が理解できず逡巡を巡らせる祥子に、七汐は言葉を重ねた。
「これから先も“お帰り”を言って欲しいし、祥子さんの元に帰ってきたい。
貴女と、“家族”になりたい―――」
「―――ん、っと?」
ぬいぐるみを抱いたまま 照れ笑いながらも、きょとんとした表情を浮かべる祥子。
カモフラージュに連れてきた大きなクマのぬいぐるみに“ソレ”を持たせていたのだが
ぬいぐるみと七汐の顔の間を、視線で往復させる祥子が肝心の“ソレ”に気付いてくれるまでには
思いの他、時間を要した。
業を煮やした七汐が、くまの手を祥子の顔前に差し出すまで。
期待通りに事を運ばせてくれないのが、彼女の魅力の一つでもあるのだが―――。
鋭いようで 肝心なところが鈍い彼女に、今日の誓いを有耶無耶にされては困る。
それだけは、絶対 させるものか。
「逃がす気はないから、祥子さんでも分かる様にはっきり言いますね!
俺と 結婚して下さい」
・
・
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ