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それからは、I-nfinity∞の住人が代わる代わると大町の病室を訪れた。


彼女の個室には常に人が居て、
病室では、七汐が今まで会った事のなかったI-nfinity∞の住人に出くわし、
大町が仲介して紹介してくれるという奇妙な構図も体験した。
姫子と真依がINFINITYの新作を持ち込み、試食兼相談をしたり、
桐島や大黒が酒を持ち込み、飲み会を始めて注意されたり、


(彼女は、胃癌だったはずだが……
 どうやら本人が”持って来い”と せがんだようだ)


クリスマスには若葉と明日香がコスプレして訪れ、他の患者にも好評を得たり、
一矢や祥子は、INFINITYのWEB広告を担当していた大町から、仕事の引継ぎも行っていた。


七汐も睦に付き添い、休憩時間や当直明けに大町の病室を訪問したが

あまりにも賑やかで、穏やかで―――
ここが病院だという事を忘れてしまいそうになる。


彼女は、そんな穏やかな時間を望み、
最期は 幸せだった。と、微笑みながら息を引き取った。





エンゼルケアは、I-nfinity∞の女性陣で行われた。
生前、大町が“この化粧品を使って欲しい”と、祥子達に頼んでいたという。


最期の衣類、亡くなった後の荷物の事―――
彼女は自らの死期を悟り、少しずつ身辺整理を整えていた。


彼女の死後公開されたエンディングノートには、がんと診断されてからの思いや、 INFINITY(仕事)の事、I-nfinity∞の住人を“家族”と記し、一人一人に向けたメッセージが綴られていた。

そこには、救急搬送の際に初めて会い、未だ知り合って日が浅いはずの七汐に対しても メッセージが残されており、
『自分の気持ちには、貪欲で在れ』という何とも意味深なアドバイスを見て、思わず苦笑いが零れた。




三笠夫婦が喪主を引き受け、葬儀は大町の残した“エンディングノート”の内容を尊重し
”I-nfinity∞の住人だけで“執り行われる事となる。


こんな仕事をしているのだから、人の死は、珍しい事ではない。
だけど 慣れる事は決してない。


それが、知り合いならば尚更に こんなにも重く 苦しく 深い事だと
七汐は思い知らされたのだ。

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作者名:kohaku | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年11月12日 22時

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