＊ Two-faced 5 ＊ (ページ11)

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彼女の視線の位置は、七汐と大差ない。

身長175㎝はあるだろうか―――
すらりと長い手足と、切れ長の瞳、絹のようにサラリと落ちる横髪を耳に掛け、足を組み替える何気ない所作でさへ、随所に大人の色気を醸し出していた。

女の名前は大黒立花。
I-nfinity∞(2C)の住人で、INFINITY∞のバイヤーとして海外を飛び回っていると、以前睦が話していたが、まさかこんな“男前”な女性だとは、想像もしていなかった。

祥子が一矢の誘いを受けて転居してきたほぼ同時期に、
立花は、一矢と同じくINFINITY∞のオープニングメンバーでもある大町櫻に誘われて、I-nfinity∞に転居してきたという。
祥子とは同じ年という誼もあり、直ぐに打ち解けた。
立花がバイヤーとして海外に飛び回る間も、INFINITY∞の仕入れ相談や発注書のやり取りなどで頻回に連絡を取っていたらしい。

思い返せば、流暢な日本語の語尾は日常会話に不相応(そぐわ)ず、時折不自然な場所で英語を混合させていた。
まるでアニメの悪役のような言い回しを聴いた時点で、“おかしい(揶揄われている)”と気づくべきだった。

いつもなら冷静に分析できるはずが、祥子の事となると余裕が削がれる。
こんな初歩的な事を見落とし、振り回されるなんて。

七汐は大きな溜息を落した。

「真依から、櫻の容態が厳しいと聞いてイタリアから戻って来た。
君の事は別件で祥子から聞いていたよ。凄く応援したい子がいる……ってね。」

簡単な経緯と自己紹介、そして七汐を揶揄った事への謝罪を手短に述べると
煎茶を飲み終えた立花は腰を上げる。

「私も疲れたから、3C(部屋)に戻るよ。詳しくは祥子に聞くと良い―――」

立花に促されるように、睦も足早に立ち上がる。
今日はやけに睦の部屋(3C)が片付いていると思っていたが、そう言う事(・・・・・)かと理解する。