Glass 44 ：齟齬 ページ10
＊
「はい、救外萩原―――え、院内での搬送依頼？」
救急室が落ち着いていた為、外来他部署への応援に出向いていた七汐の院内スマートフォンに着信が入る。どうやら、化学療法中の患者にアレルギー様症状が起ったというのだ。
応援先のリーダー看護師に救急に戻る旨の断りを入れ、七汐は外来のバックヤードへ急いだ。
「今丁度外来にいるので、このまま現場に向かって患者連れて降ります。
酸素・点滴の用意と、
その足で向かった先は、院内にある外来化学療法室。
抗がん剤等を使った治療を専門に行う部署であり取り扱う薬がやや特殊なため、急変時の流れはプロトコルで取り決めされており、救急外来との連携も取られている。
院内にありながらも初めて入ったその場所では、既に担当医が駆け付け初動処置が施されていた。
患者はストレッチャーに移され、酸素が装着されている。
「救外の萩原です、一緒に搬送します」
「早いですね」
「偶然近くに居たもので」
この部署の担当看護師だろうか―――
若い男性スタッフが酸素を繋ぎ変えながら救急カートに置かれたカルテとメモを掴んだ。
「
意識はありますがショックバイタルで５分前に左大腿にアドレナリン0.5ml筋注しています。
申し送りは……」
「
こくりと顎を引く担当看護師と共に、七汐は患者を連れて救急室へと向かった。
エレベーターの先では、救急医と救急スタッフが待機しており、
到着後直ぐにモニター装着と診察が始められた。
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