⋆ ページ8
・
「ねぇ祥子さん―――英語は得意？」
「……何、突然」
身体の熱も冷めきらず、腕にすっぽりと抱かれたまま
耳元で囁く言葉がソレとは、なんとも色気のない話だ。
「ピロートークにしては、色気のない話ね」
「可愛かったです、祥子さん。
もう一回す…「英語は得意な方よ。何？教えて欲しいの」……」
「ピロートークは？」
「受験に必要なんやろ？ ええよ、教えてあげるけど」
「どっちを？」
「英語。」
―――ピロートークが試験問題に出て来たら、笑うやろ。
(確かに―――そんな試験、ヤだけど)
ほんの冗談のつもりだったのに。
真面目な顔をして言い返されると、気が抜けて笑ってしまう。
祥子は七汐の腕の中から抜け出すと、今度は七汐を包み込むように両腕を伸ばして抱き寄せた。
「最近、頑張り過ぎてるんちゃうかなぁーって、思っててんけど。
うちに出来る事が分からなくて。
こうして頼ってくれるんは、凄く嬉しいよ」
―――なんかこう、必要とされてるんやぁ〜って思えるから。
「―――……必要です」
こんなにも。
必要としています……貴女の事を。
「今日はこのまま、一緒に居てもいい？」
こんな状況のせいか、いつもより低く悠然とした七汐の声が、酷く蠱惑的に聞こえてしまう。
こんな時ですら、流されないように、惑わされないようにと思考が働いてしまう祥子は、
一つの提案を持ちかけた。
「―――……英語で言って？」
「苦手だから、教えてもらいたいのに……ズルいなぁ」
「言わないなら、(家に)戻るけど」
なんだっていい―――
下手でもいいから、聴かせて欲しい。
(不器用で、可愛げのないうちがこの状況を“許す”為の、言い訳が欲しいの)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
