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そんな七汐とは裏腹に、翔は視線を逸らせ、力ない苦笑いを浮かべる。
こんな弟を見るのは想定外で、七汐は驚きを隠せない。
言葉を詰まらせた七汐に、翔は自嘲するようにぽつりと呟く。
「スマートで所作に隙が無い。
俺は、好きな人を食事に誘う事すら出来ないんだから」
―――腹ん中で
ズルい。
と、翔は呟いた。
―――全く、
ズルいのは、
否。
(
七汐は翔のスマートフォンを奪い取ると、片手でそれを操作し、電話を掛ける。
その様子を、翔はぽかんと口を開けて眺めていた。
通話が終わると、スマートフォンを持ち主に戻し、
今度は自らのジャケットからスマートフォンを取り出し、地図アプリケーションを起動する。
「予約取れたから、そこ、行くぞ?旨かったら食事くらい誘えよ?」
「そう言うトコ!!」
戻されたスマートフォンをポケットに突っ込み、
翔は、預けておいたホルスターバッグを腰と大腿部に装着した。
そして、先導する七汐のテールランプを追いかける。
翔とのインカムは、あえて繋がない。
サイドミラーで追ってくる赤いバイクを確認しながら、
装着したスマートフォンのナビゲーションに従いバイクを走らせた。
二台のバイクが、乾いた風を切り
駆け抜ける。
自分にはない、
眩しく輝く色への 羨望を抱きながら―――
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