＊ Two-faced 4 ＊ (ページ48)

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赤のバイクが勢いよくゴールに吸い込まれると、静まり返った会場にざわめきが戻り
止まっていたかのような時間が、再び動き出す。

『ゼッケン12番。ただいまのタイム。１分29秒1―――』

「マジかよ！！」

どよめきが、会場を包み込む。
周囲がレコードタイム( 新記録の走破タイム)だと噂した。

翔(弟)との実力差は、自身が嫌と言う程痛感している。
現に、タイムには雲泥の差があるではないか。

―――これ以上彼と比べられるのはごめんだ……

胸の奥に湧き上がる黒い感情(嫉妬心)をぐっと押し込め、観客の視線が赤いバイク(弟)に注がれる間に、
七汐は愛車の黒いバイクを隠す様にと奥に移動させた。

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冬の乾いた空が眩しい休日の今日、
萩原兄弟は共に、サーキットに特設されたジムカーナ競技に参加していた。

競技と言っても一般で広く知られる公式大会ではなく、
愛好会が練習用にコースを整備して定期的に参加者を募って行う内々の大会だ。
だからこそ選手同士の顔見知りが多く、
普段参加しない新参者の七汐にとっては、やや居心地の悪い場所でもあった。

ジムカーナ( Moto Gymkhana)とは、舗装路面で行うスラローム競技でタイムを競うモータースポーツの一種で、
レース競技のようなマシンの改造が必要なく、公道を走れるバイクなら排気量に関わらず気軽に参加が出来る事が特徴だ。

元はオートバイの運転技術向上目的で始まったため、
スラロームや八の字等、内容はバイク教習所卒業検定の究極版と言っても過言ではない。
マシンではなくライダーの技量を魅せる、日本発祥のモーターバイク競技である。

車体後部の左右にパニアを積載した、重さ300㎏を超える白バイを自在に操りながら訓練を続けている彼にとっては、
普段乗り慣れた200㎏＋αの愛車(バイク)の操縦は造作もないだろう。

翔が目指す白バイ隊員に求められるのもこうした基本技術であり、
翔も暇を見つけては、練習がてら参加しているのだという。