＊ ページ40
どうにも。
同世代の男が膝を合わせると、直ぐ話題の品を欠いてしまって仕方がない。
棘を含ませた物言いに、彼等姉弟の確執の深さを改めて垣間見た。同時に、この部屋を見せた彼女が、睦にとって
だとすれば、どうして彼女が夕暮れ時に睦の部屋を訪れていたのか。
そして、大事そうに抱えて出て行ったあれは一体―――
七汐が不要な詮索を巡らせていると、お茶で口腔内を潤した睦がにまにまと笑いを見せた。
「僕は―――ずぼらでだらしがない女より、“キリッとカッコ良くて仕事が出来る女性”の方がタイプです」
感情をあまり表に出さない睦が、ワザとらしくニヤついて見せた理由くらい、察しが付く。
恐らく、祥子との事を示唆しているのだろうが、まだまだ詰めが甘い。
「そうか。俺は―――
普段はカッコいいくせに、部屋にぬいぐるみやふわふわのクッションとか飾っているような女性が好きだけど」
「そう―――です、か？」
想像と違っていたのか、睦は眉間に皺を寄せ妙な表情を見せた。
意外な睦の反応に、こんな顔も出来るのかと、嬉しくなる。
そして、彼までもが七汐の祥子に対する想いに気付いていたのかと思うと、恥ずかしくなる。
気が付けば自然と世間話に流れたが、当初の目的は達していない。
元はと言えば仕事終わりに
“彼女”と睦が恋仲ではないという“言い訳”は聞いたが、では“何をしていたか”について結局訊ねてはいなかった。
まぁ。他人の事情をあれこれと聞く趣味は七汐になく、話を流されたならそれでもいいのだが。
七汐の機微を感じ取ったのか、睦は雑談を止め再び茶を口に含んだ。
左右に流れる睦の視線の動きが、逡巡を思わせる。
余程言いにくい事なのだろうか―――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
