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玄関からそのままキッチンに向かい、冷蔵庫から2リットルのペットボトル茶を取り出すと、彼は近くに置いてあったガラスのコップを引き寄せ、コボコボと茶を注ぎはじめた。
これ以上部屋の中を案内する気配りはないらしく、やはり
勝手な事をして申し訳ないとも思うが、
取り敢えず自分の座れる場所を確保するつもりで、ラグマットの上に散乱したテキストや楽譜を手に取った。
音楽にはまるで知識がない為この当たりは不用意に触らない方がいいだろう。
かんたんモニター心電図の読み方や消化器外科ノート……この病気が見えるシリーズは七汐も何冊か持っている。
がんエマージェンシーは、薬剤師の友人の家で見た事があるものだ。
ジャンルごとに揃えて机の上に積み上げる。
印字された資料らしきものも、近くのクリップでとめて机に戻した。
(あとは―――)
気が付けば、自分の座る場所だけでなく、ラグマット周囲のテキスト類を全て整理していた。
両手にお茶とツマミのような菓子類を持って戻った睦は、「すげ……」と感嘆の言葉を洩らす。
「七汐先輩。嫁に欲しいタイプだって、言われません?」
「黙れ。整頓出来ない姉弟め」
「やっぱり!澪の部屋片づけていたの、七汐先輩ですか?
実家から送られてきた米を届けた時、一度だけ部屋がすげー綺麗でビビりました」
「俺は、乾いた
睦は乾いた笑いを浮かべて視線を逸らせた。
どうやら彼にも、
「僕は、“好きな人”が部屋に来る前位は、片付けます」
「じゃぁ俺は、その時からアイツにとって“どうでもいい男”だったわけだ」
「
寧ろ、ワザと
「へぇ。睦は、彼女の部屋でそれ見て煽られる方?」
「無理。逆に萎える」
「同感」
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