Glass 49 ：好意 ページ34
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橙色の間接照明が、大きな窓から薄明りを洩らす。
ぼんやりと揺れるそれに誘われるように 大人達が暫しの休息と癒しを求めて足を向けた。
そんな彼等の憩いを、時に優雅に……時にロマンチックに……
そして、
時に静かに演出する―――
それが
平日23時を過ぎると、
秋の夜長を満喫した大人達はそれぞれの家へと帰っていく。
角の席にちらほらと深酒を嗜む客はいるものの、店内に先程までの賑わいはなく
同じ光だと言うのに、白い壁をゆらりと染める橙が
どこか哀愁を帯びてさへ、見えるのだ。
「ボトルの在庫確認と発注終わりました」
「ああ、有難う―――相変わらず仕事早いな、七汐」
「一矢さん、水回りの片づけも終わったよ〜」
「助かるよ、若葉ちゃん」
本日のBarタイム勤務である七汐と若葉は、一通りの仕事を終えて一矢に報告を済ませると、カウンターの隅で制服のエプロンを外す。
暫くシフトの重なりがなかったが、この日は久々に若葉と勤務が重なった。
昼間は愛くるしいイメージが強い若葉だが、Barタイム勤務の今はトレードマークのハーフアップをシックな柄のバレッタで飾り、ばっちりと仕込んだ化粧は彼女の童顔を普段とは違う大人びた様子に魅せていた。
場の雰囲気に合わせて魅せ方を変えられるのは、彼女の良い所でもあり尊敬すべきところだろう。
この後も朝まで勤務に残る一矢に挨拶を済ませ、スタッフヤードに荷物を取りに入った七汐に、
同じく勤務を終えた若葉が声を掛ける。
いつもの明るいアニメ声ではなく、落ち着いたトーンでの余りに的を射た質問に、
七汐は思わず一度握った荷物をテーブルに置いた。
「七汐君ってさ―――祥子さんの事、好きなの？」
「―――……どうして？」
こんなにもストレートに聞くからには、彼女には確証に近い何かがあるのだろう。
咄嗟に出た七汐の
先日祥子からは正式なお付き合いの承諾を貰えど公言してよいとは聞かされていない。
遅かれ早かれI-nfinity∞の居住者には伝えなければいけない事であり、ここで無理に誤魔化すのも後に響く。
(どのように返答するのが最適解か―――)
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