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珍しく自嘲を浮かべる明日香に、
真衣は手元の作業を止めることなくフォローで応えた。
「ウチは―――明日香さんもキラキラして素敵な大人の女性だと思うけど」
「あら嬉しいコト言ってくれるじゃない！真依ちゃんはあたしに憧れてくれているのかしら⁈」
「え、はい。まぁ―――」
いつもの明日香節に、真依はバツが悪そうに視線を逸らせた。
歯切れの悪い彼女の物言いに、分っていると言わんばかりに明日香が笑う。
「あはは！真依ちゃんって正直よね！そう言うトコ好きよ〜！！
でも、知ってる。真依ちゃんは、真矢さんの事見ているよね〜」
明日香の鋭い指摘に一瞬驚きはしたものの、真依は黙って頷いた。
その姿に、明日香は優しく目を細める。
「睦が―――この前真依ちゃんが真矢さんの車椅子を押して病院受診を手伝っているのを見かけたって。個人情報だから声をかけなかったけれど、って」
「真矢さんには―――返しきれない恩があって……」
口ごもる様子から、ここでは言いにくい事だろうと察しはつく。
明日香はそんな真依の機微を感じ取り、「またゆっくり話しましょ」とウインクと共に話を流した。
七汐と睦による息の合った働きで、フロアの効率が上がったという事は、オーダーも増えて厨房が忙しくなるという事。
ふと厨房の奥に目を配れば、捌き切れていないオーダーの札が並びだしていた。
「ウチ、調理の方手伝ってくる」
「了解。スイーツの仕上げは任せて！」
明日香と真依は視線を交わすと、それぞれフォローに回る。
この日のINFINITY∞も大忙し―――だけど、皆で協力して何かを成し遂げるのは
実に充実感に溢れるものだ。
誰かを支え、誰かに助けられ 共にこの空間の“最良”を作り上げていく
そうして学んでいく
昨日よりも、成長していく―――
テラス席を望むINFINITY∞の大きな窓の外に伸びる影が、日に日に長くなっていく。
低木に寄り添うように、コノシメトンボがゆっくりと羽を休めていた。
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