Glass 47 ：約束 ページ30
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弾ける歓声が 初秋の夜空を彩り
次々と打ち上げられては腹に響く轟音が この瞬間を 非日常な世界へと誘う
彼女の両親に連れられ、花火会場に到着したものの、予想外の人込みに両親とは早々に離れてしまった。
まぁ。
この年齢になり、初デートで花火観戦が親同伴というのも情緒に欠ける。
人が少なくとも、何か理由を付けて離れるつもりではいたが。
川岸に フェンスにもたれて肩を並べ、空を仰ぐ祥子の横顔を見た。
花火よりも 貴女の綺麗な横顔から目が離せない―――とか
歯の浮いたような言葉を口にできる程、若くはない。
七汐は、不埒な言葉を言い出さないよう右手で口元を制し、
空に夢中な祥子の右手に、さりげなく左手を絡ませた。
航空券まで手配済みという隙のないエスコートも
祥子を知る為の街歩きデートプランも
いきなりの両親への紹介も……
楽し過ぎて、嬉し過ぎて
気持ちの整理が追い付かない。
花火はこんなにも綺麗なのに、七汐の心境は、それどころではなかった。
「ズルいです、祥子さん。こんなの……流石に期待する」
「期待って―――？」
次々と打ち上げられる花火を見上げながら、独り言のようにつぶやいたはずの七汐の言葉は、
恥ずかしくも祥子に拾われていたようで
意地悪く問い返す彼女に、ムキになる七汐も「だからっ!!」と声を荒立てた。
「祥子さんが―――俺と、同じ気持ちでいてくれる……って、勘違い する―――」
「勘違い、ちゃうよ？」
段々と語尾が弱々しくなり、恥ずかしさのあまり視線を逃す七汐の頬に
柔らかい掌が触れた。
胸に響くのは、花火の音か
心臓の鼓動か
夜空に咲く大輪の華が
重なった二人の影を 五色に飾った
「言ったやろ？何かを一生懸命頑張る人は好きやって。
うちが、萩原君を支えてあげる
だから君は 前だけ見てたらええ。
うちを好きにさせた責任――― 一生かけて取ってくれるんよな？」
彼女がカッコ良すぎて
大好きすぎて―――
この瞬間が、夢ではないかと錯覚してしまう
いや。
―――夢になんて させないけど、
「勿論。責任、取ります
生涯、貴女を愛します―――」
貴女を大切にしてきた ご両親のように
貴女を育んだ 温かい家庭のように
こんどは俺が―――
貴女と二人で その“家庭”を築いていきたいと思った。
自らの口から出たとは思えないような台詞に、恥ずかしさを覚えつつ
それを隠すかのように七汐は 祥子の肩に額を寄せた。
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