* ページ25
「あ、いや……私は医師ではないので、きちんと病院で精査を受けた方が良いです。
飲酒習慣があるなら控えておく方が宜しいかと」
七汐の言葉を追い風に、祥子の母はここぞとばかりに父を責め立てる。
「ほぉら!七汐くんも、お酒は止めなさいって言ってるじゃない!」
「今日くらいはいいだろう⁈この日の為に鹿児島から芋焼酎も取り寄せたんだぞ!」
「また勝手にお取り寄せしてッ!ダメよ!お酒は一日ビール1缶までって決めたでしょ⁈
来月は引きずってでも病院連れて行きますからね⁈」
「ラッキー!焼酎、父さん飲まんのやったらうちがもろて帰るわ」
「祥子さんもダメです。お酒弱いくせに……」
「一緒に飲むならええやろ?あかんと思たら、萩原君が止めてくれるんやし」
「だったら、持ち帰らないように未然に止めます」
「えぇぇぇぇ……殺生ゃ」
祥子は眉を蜂の字に歪め、口を尖らせた。
(そんな可愛い仕草を見せても、ダメなものはダメです!)
……ダメだから、
酒に崩れた貴女を見て、困るのは俺なんだから。
先程までの緊張はどこへやら。
リビングはすっかり和やかな雰囲気へと包まれた。
リビングに、
予告なく訪問する事を提案したり、防犯カメラでの観察や七汐を試すような計らいはやや特殊性を感じる。
余程警戒されているのかと不信も感じたが、祥子と両親の様子を見ているとそれも杞憂であったようだ。
団欒の後、祥子は母親に連れられて奥の間に消えていく。
リビングを出る際、再び父親に鋭い一瞥を向け「萩原君苛めたら容赦せぇへんから。秘蔵の年代ワインも全部持ち帰るからな?」と吐き捨てた。
「ちょっと待て祥子!お前、なんでそれを知っとるんや!」
この父娘、ツッコミどころが多すぎて戸惑うが、仲が良い事は素晴らしい事だ。
INFINITY∞では皆の姉的存在の彼女だが、実家では“子供”のようで微笑ましい。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ