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「うち、防犯の為に外に人感センサーで作動するカメラを置いとるんよ♪
だから、インターフォン鳴らさなくても二人が帰って来たんは分かったし、
外での会話もマイクが拾ってて。盗み見したようで、堪忍なぁ」
(え。そんな展開あり?)
家に入る前だからと気を抜いていたが、防犯カメラで見られていたとは。
確かに。企業面接とは、面接室に入る前から始まっている。不測の事態とは言え、門扉の前で取り乱していた七汐に落ち度があるだろう。
だがここで、取り乱しては頼りのない男だと印象付けてしまうだろう。
特にこの―――
祥子の“父親”には
「いえ。防犯意識が高い事は良い事だと思います。流石警察関係者の方だなと」
七汐の言葉に、男はピクリと眉を動かした。
(当たり―――か)
父親の表情からは是非を読み取り難いが、彼の隣で目をまるくする母親や、七汐の隣で驚きを表情に出す祥子の顔を見れば、七汐の推察が凡そを踏んでいた事は間違いないだろう。
身内の反応に苦笑いを浮かべ、男は渋々と口を割った。
「祥子から、何か聞いていたのか?」
「ご両親は公務員と」
それは、玄関先で祥子から聴かされたこと。
外での会話を防犯カメラで聞いていたのなら、彼等も知っているはずだ。
「ははは!面白い子だな。君は、医療職だと聞いているが―――」
「はい。勤務部署では警察関係者と接する事が多いので」
事件や事故で搬送された患者には、警察関係者が被害状況の情報提供を求めて同行してくる事がある。刑事ドラマ等ではここまで細かな描写がない為か、警察と救急部署に意外な接点がある事を知らない人も多い。
「まぁまぁ!固い話はこの位にして、お茶菓子頂きましょ!
そうそう、七汐くん―――この人最近血圧が高くて、血液検査も赤い所が増えてきたのだけど、何かアドバイスしてあげてくれへん?」
「こ、こら!余計な事を―――」
「七汐くん来たら診てもらおうと思ったのよ!ほら、この……ASTとALTとか、去年より高くなってるじゃない?」
ASTとALTは肝細胞が破壊されると血液中に流れ出る酵素の一種だ。
となると、初見で感じた“肝臓が悪そう”の予想も、外れてはいなかったようだ。
そして、相手が医療者と聞いて健康相談を持ち掛けてくるのはよくある事だが、医師でもないのに無責任な発言は出来ない。七汐は“いつも”の言葉でやんわりと断りを入れた。
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