＊ Two-faced 4 ＊ (ページ22)

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緊張で、掌に汗を浮かばせていると、広い玄関の奥から明るい声が返って来た。
パタパタとスリッパを鳴らしながら、小柄な女性が走って来る。

祥子と同じくキリっと美人系の(怖そうな)母親が出てきたらどうしようかと覚悟をしていた七汐にとって、フレアスカートを揺らしながら出迎えてくれた女性は、祥子とも、七汐の神経質な実母ともまた違ったタイプの人だった。

「いらっしゃーい、七汐くん♡」

(な、七汐くん？？)

祥子からも、滅多に名前呼びしてもらえないというのに、初めて会う女性からこんなにもフレンドリーに迎えられるとは思わなかった七汐は、拍子を抜かれる。

想定外のテンポに一瞬怯みはしたが、第一印象は大事だろう。
改めて気を引き締め、祥子の母親という女性に向き合った。

「お初にお目にかかります。
祥子さんの―――「祥子から聞いとるよぉ♪さ、上がって！お父さんも待ってるからぁ」―――はい……。」

間延びするスローテンポな彼女の言葉に、七汐の渾身の挨拶は呆気なく遮られ、祥子の父親との対面に気を引き締める間も与えられず、祥子に引きずられるようにリビングへ通される。

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広いリビングは小綺麗に整頓されていた。元々家主が几帳面な性格なのか、予め七汐が来る事を想定しており片付けたのか。
見渡す限りに特変のある物はなく、至って普通(・・)の家庭のリビングを印象付けた。

やや不自然に感じる程に―――。

(ゴルフバックや趣味の物でも置いていれば、話題の一助に出来たのだけど)

「初めまして。萩原七汐と申します」

警戒する七汐をソファーに座らせると、祥子は七汐の隣に腰を落としてニコリと笑みを浮かべ、斜向かいに座る男性に視線を向けた。
母親は―――早々にキッチンへと下がったようだ。