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「萩原、NP受けんの？」
(やっぱり、そっちか―――)
「横峰師長に、何か聞いたんですか？」
無理やり定食を口に運びながら、七汐は質問で返す。
警戒する七汐に救急医は、「いやぁ〜」と白々しく視線を逸らせた。
「まぁ、色々あると思うが俺としても、萩原がNPで居てくれると色々仕事がしやすいなぁと思ってね」
―――若いくせに知識も技術もあるし、機転が利くし、リーダーシップも取れるし？
指を折りながら“良いところ”を並べていく救急医の見え透いた阿諛に、
気味の悪ささへ感じてしまう。
「―――……過分な評価を有難うございます」
「かたい かたい!!」
警戒を露わとする七汐に、彼は苦笑いを浮かべた。
とは言え、気に掛けてくれている事に変わりはなく、
今後も彼の指示・指導を仰がなければいけない立場である為、失礼な態度を取るわけにはいかない。
伝えるには時期早々の気もするが、隠しておくほどの事でもない。
協力者となるならば、公言しておくのも一つの手段であろう。
「まだ、師長には返事していませんが―――来年秋の出願を考えています」
「よし、よく言った！
じゃぁ、総合実習に供えて今からできるだけ処置について、エコーや画像診断に慣れとく方がいいな」
まるで自分事のように楽し気に計画してくれるのは有難いが、七汐の表情は固まったままだ。
言うは易いが、NPになる為には七汐にとって数々の難題が待ち受けているのだ。
「いや、それより先に受験が……」
「なんだ、心配でもあるのか？お前、学会発表もしているし、小論文も面接も得意だろう？」
「英語が……苦手で……」
自信のなさを表すように、段々と語尾が小さくなっていき、
最後には決まりが悪そうに視線を逸らせた。
より専門的な知識を必要とするNPは、その医療情報を入手するために海外の論文を検索する事が多い。
医療系英単語を解読できるだけの英語力は、必須要件となるのだ。
先日も、薬剤師の友人から“薬の重篤な副作用に対する症例報告”を英論文で渡された。
翻訳ソフトを使用して読解を試みたが、医療系英単語はやや特殊な表現も多いため、意味を理解する為にかなりの時間を要した。
恥ずかしながらそれが、今の七汐の英語力だ。
当然、試験会場で電子辞書や翻訳ソフトは使えない。
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