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Karte.11 お気に入りの場所になれるように ページ39



「……ぁ」

「ん?……ヒナじゃないか、学校帰り?」
―――そうか、今日から新学期 だったな。



家の前に停まっていた車から降りてきたのは、近所に住む薬剤師の如月 風(きさらぎ ふう)さん。

数年前から祖父さんのお遣いで大垣家に来てくれる事がある。

人と話す事が苦手な日向だが、彼女は……何というべきか、
日向にとって話しやすい部類の“大人の人”だった。

何より日向の絵を、誉めてくれる。


「こんにちは……」


日向の方はと言うと、相変わらず会話の際に口ごもってしまうのだが、
それでも見かければ決まって声をかけてくれる。

先日は、日向が通っているひだまりサロンに偶然彼女が来ており、
律達の薦めもあって時々薬の指導に来てくれる事となった。



彼女はとても博学で、説明も分かりやすい。

少しでも色々な知識を彼女から得たかった日向にとって、
風がひだまりサロンに来てくれることとなったのは、とても嬉しかった。



「お祖母さんの薬、一週間分カレンダーにセットしておいたから」

「あ、有難う……ございます」


(お礼くらい、スマートに言えたらいいのに。
どうして僕はこう、緊張してしまうのだろう―――


下を向き、唇を堅く結ぶ日向に、風は急かすことなく、柔らかく話しかける。


「何か、気になる事があるのか?」

「あ、いえ……その―――」



自分なんかが、こんな事を話しても良いものだろうかと
迷いもあった。

だが、先日自分の思いを伝える事に躊躇っていた日向の肩を、律が押してくれた事で、
“風にサロンに来て欲しい”事を、
自分の言葉で伝えることが出来たのだ。


成功体験は、次に踏み出す勇気をくれる。

ここに、背中を押してくれる律はいないけれど―――



(大丈夫―――)



律に教わった“言霊”を信じ、日向は両手を握りしめて覚悟を決めた。



「風さん、聞いて下さい―――実は」


日向は、最近祖母の様子がおかしい事を、風に相談した。


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シオン(プロフ) - この囲碁の影の人は誰か凄く気になります。 (2022年9月27日 7時) (レス) @page49 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 自分のキャラも登場させてくれてありがとごさいます。 (2022年9月19日 22時) (レス) @page38 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ(プロフ) - 風を出演させて下さりありがとうございます!こんなにも早くサロンのお手伝いができるとは思わなかったのでとても嬉しく思います!風の態度や話し方、律さんへの接し方と日向くんへの接し方の温度差も私が希望通りです!ありがとうございます! (2022年9月19日 16時) (レス) id: 64ca5697bb (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 律さん、風邪大丈夫になるのですか!心配です。 (2022年9月19日 8時) (レス) @page30 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kohaku | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年9月17日 10時

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