Holistic Blue

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そもそも色には人の感情を調整するエネルギーがある。



赤には元気や勇気をくれ、奇跡を引き寄せる力があり、

ピンクは愛情や女性的なエネルギーを引き出してくれ、

オレンジには自由や創造性、表現力を赤めるクリエイティブな力がある。

黄色は無邪気さや協調性を高め人間関係をスムーズにし、

緑は心と体のバランスを整え穏やかな気持ちにさせる。

そして青は、冷静さを保ち記憶力を高める効果があるという。



「また、生理学的に副交感神経を優位にする為、セロトニン等の癒しホルモンを分泌する働きも証明されている。
暗記に関してはわずかだけど、黒ペンで書くよりも効率的に覚えられるというデータがある程だ」


勉強している時よりも僕が集中して話をきくものだから、律も饒舌に話を続けるのだ。
そう言えば、ひだまりサロンの屋根の色も、空のような青をしている。
これは、律が選んできたペンキの色だが、彼は心を落ち着かせる―――そんな効果も狙っていたのだろうか。

僕の疑問に、律は意外にも「いいや」と即答した。


「確かに、精神科領域では色や香りなんかを治療に使ったりもするけれど、屋根の青に日向の思っているような深い意味はない。
単に青は、俺の一番好きな色なんだ。
好きな色って言うのは、自分を守ってくれる色でもあるからな」


にこりと瞳を細める律の瞳も、綺麗な青をしている……
引き寄せられるように、じっと律の瞳を見つめていると、珍しく律の方が「何？」とばつが悪そうに視線を逸らせた。


「まぁ。海外では医療現場ですら祈りや願掛けの治療効果を認めている。
大丈夫、日向は出来るから」


そう言い残し、律は地域のお年寄りが集まる別のテーブルへと戻っていった。


「好きな色―――か」


僕は律に貰った青いペンを握りながら、丸テーブルで笑談する律を視線で追った。
開け放った窓から柔らかな光が射しこみ、スポットライトのように律たちを照らす。
楽しそうに笑う笑顔にも、色が溢れて見えた。


「“ひだまり”の色って、何色なんだろう―――？」


僕がぼっと考えに耽っていると、サロンにふわりと、風が舞い込んだ。
心地の良い風に、部屋の隅っこに置いた観葉植物(町の人が持ってきた)がそよそよと音を立てる。

ふと、3つあるテーブルの、開いたもう一つに視線を取られる。

ゆらゆらと揺れる光が柔らかな陰をつくり、
まるでそこに居る誰かが、温かくサロンを見守っているようだった。

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