Holistic Blue

Karte.7　記憶 ページ23

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声に出すとストレスが軽くなると言われているが、サロンに集まった人達は、決まってすっきりとした笑顔で帰っていく。

今日も僕は受験勉強にとサロンを訪れた。
ここは適度に人の気配があるから、心地いい。そして、目標があるからこそ頑張ろうという意欲も溢れる。
人見知りが強い以前の僕なら、人のいるところに好んで足を運ばなかったというのに。


この、“ひだまりサロン”は特別だった。


そんなサロンを心地よく思うのは僕だけではない。
近所のおばちゃん達も、サロンを一通り掃除した後は総菜やお菓子を持ち寄って世間話に花を咲かせている。
僕は違うテーブルに座り、彼女達の話をBGMに、青いペンで勉強に勤しむのだ。


ここに居れば、勉強に行き詰った時に上手く気分転換を教えてくれる“先生”がいる。
彼の雑学はとても興味深く、受験勉強よりもずっと身に入る。

残念ながら、今日はその“先生”が日勤業務の為不在である。
しかし、いつでも人が集えるサロンにしたいという律の意向で、ここは主不在の時間でもずっと解放されていた。


防犯上大丈夫なのか？と聞いたこともあるが、「ここにある大切なモノは、形のある物じゃない。だから誰にも奪われることはない」と、カッコいい言葉を並べていた。

勿論、このサロンに集まる人に悪い人がいない事は、僕がよく知っている。皆、この家の修繕を一緒に行ってきた人たちだから。


一応、主である律が不在の間に万が一の事がない様にと、僕も試験勉強をしながら留守番をしている訳で―――。


「最近物忘れが激しくて辛いわぁ。この前娘と一緒にテレビを見ていて、アイドルの名前が出て来なくて困っちゃった」

「分かるわ！私も買い物に行くと何か一つ買い忘れているのよね……メモを書いたのに、そのメモを家に置き忘れちゃうとか！」

「そうそう！」

「最近うちのおじいちゃんの認知症が急に酷くなっちゃってね……薬を飲んだことを忘れちゃんて同じ薬をだぶって飲んじゃったり、トイレに入ったっきり1時間以上出て来なくなったり…かと思えばテレビもつけっぱなしで一日ぼーっとしている事が増えたのよ」

「あら、半年前に律先生に手術してもらって、すっかり元気になっていたあのおじいちゃんが？この前ゲートボール大会で優勝していたじゃない」

「そうなのよ、優勝したことだって忘れちゃっていて」

「それは大変ね……」

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