8-2 ページ21
これにしよっかな｡
ボタンを押すと、ガゴンと音を立ててグルコースが取り出し口に落ちる｡その途端に私が選んだグルコースのボタンが赤く点灯した｡またラスワンか｡やけに最後のやつ当たるよなー私｡
グルコースを取り出そうとしゃがむと、後ろからあ……という声が聞こえた｡後ろに並んでる人いたんだ、全然気づかなかったわ｡
グルコースを持って振り返ると、そこにいたのは私が一方的に覚えてる女の子だった｡
｢ミヤちゃんの後輩ちゃん……だよね?｣
｢ああ、先輩の友達の｣
わあ、一方的じゃなかった｡ミヤちゃんが指導してる時に紹介してもらったけど、まさか覚えていてくれたとは｡案外嬉しいもんだね｡
こんにちはって言ったらどうもって返ってきたけど、その視線は私の右手に注がれてる｡正確には私が買ったことでさっき売り切れたグルコースに、だね｡
うーん、これ食べたかったのかな｡ごめんね、私で売り切れなんだよ｡どうしよ、別に私これじゃなくてもいいんだけど……そうだ｡
｢後輩ちゃんさ、このフレーバー食べられる?｣
｢食べられますけど……｣
｢本当!?じゃあもしよかったらなんだけど、これもらってくれない?｣
えっ、て顔してるよ後輩ちゃん｡そりゃそうだよね、いきなりこんなこと言われたら驚くよね｡でもそんなことは気にしない精神を貫くぞ｡
｢実は私、このフレーバー苦手なの｡ぼーっとしてたせいで、食べたいやつと間違っちゃったんだ｡捨てちゃうのもったいないし、困ってるんだよね｣
あ、揺れてる揺れてる!もらうかどうか迷ってる!あともう一押しってとこだな｡よーし｡
｢あ、でも嫌だったらいいんだよ?頑張って私が食べるから……｣
これでどうだ!?
だめか!?
｢先輩が苦手ならいただきます｣
っしゃあ!勝った!
心の中でガッツポーズを決めた｡
でもまだ気を抜くのは早い｡最後まで申し訳なさそうな態度で突き通すんだ!
｢ありがとう｡なんかごめんね｣
そう言って持ってたグルコースを渡すと、後輩ちゃんは受け取ってくれた｡イエーイ、ミッションコンプリート!
後輩ちゃんが代わりのグルコース買ってくれようとしたけど、押しつけたのはこっちだからと言って断った｡さすがに後輩に奢ってもらうほど、だめな奴じゃない｡と思いたい｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
