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｢酸素お届けにまいりました｣
インターホンを鳴らして、相手が出てきたら最初にこの言葉を言う｡多分もう両手両足じゃ数えきれないほど言ってきてる｡そう考えると、私が赤血球として働くようになって結構経つんだな、なんて思う｡先輩たちに比べりゃまだ下っぱだけど｡
大体細胞さんはご苦労様とか言ってはんこ押してくれる｡クレーマーに当たったことないの本当ありがたい｡文句言われたら私、心折れちゃうもん｡だって豆腐メンタルだから｡
はんこ押してもらったら、荷物渡して二酸化炭素と交換｡その後は肺にレッツゴー｡これの繰り返し｡
｢ご苦労様!毎度毎度ありがとうね｣
細胞さんがはんこを持ってドアを開けてくれた｡
自分の担当?みたいなのもいくつか受け持ってるから、その細胞さんとは世間話するくらいには顔見知りになっている｡
たとえばたった今酸素を配達したお姉さん｡
この体内では珍しい女性型の細胞さん｡先輩から引き継いだ相手だ｡噂によると、ある記憶細胞さんと付き合っているらしい｡
うっ、お姉さんの笑顔が眩しい｡なんでこのお姉さんは毎度明るく私を出迎えてくれるんだ｡しかも労りつきで｡いい人すぎるじゃん｡これは記憶細胞さんが惚れるのも分かる気がする｡記憶細胞さんに面識ないけども｡
｢いえ、仕事ですから｣
せいぜい平然を装ってそう返すと、お姉さんが頭撫でてくれた｡偉いねー、頑張ってるねーって｡
ミスした時に撫でてもらったのはめちゃくちゃ報われた気分になったけど、何もない時に撫でられてもなんとも言えない気持ちになる｡気恥ずかしいっていうか｡でもお姉さんがすごく楽しそうな顔してるから、満足するまで私は何も言えないんだよね｡
｢じゃあ私も仕事に戻るね｡赤血球ちゃん、水分補給とかちゃんとするんだよ?｣
｢はい、ありがとうございます｣
まだちょっと恥ずかしかったから、この前の20さんみたいに帽子を深めにかぶってさっさとお暇した｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
