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二酸化炭素を運ぶ途中で、ふと思い出したことがあった｡例のお姉さんと私の先輩のことだ｡
研修中の時、先輩は一度だけ私を置いて酸素を届けに行ったことがある｡置いていったって言っても、私はグルコース食べて待ってただけだったんだけど｡あの時の先輩、なんか覚悟決めたような顔してたなあ｡らしくないですよって言ったら小突かれたっけ｡
多分、あのお姉さんに会いに行ったんだと思う｡
先輩は研修が終わったにも関わらず、私が初めてお姉さんのところに行く時ついてきてくれた｡変わり者だから、一応一緒に行くって言ってた｡あれ、ただ単にお姉さんに会いたかっただけだろうなあ｡私に担当変わったらもう会う機会がないから｡
先輩の話の通り、お姉さんはちょっと変わってた｡でも私が担当になることをすごく喜んでくれて嬉しかったのはちょっとした思い出だ｡たじたじにはなったけど｡
先輩がため息ついて説明してくれている姿を見て、私は気づいてしまった｡あの時は空気読んで口を挟まなかったけど｡
先輩、お姉さんのこと好きだったんだろうな｡
さすがの私もそれを尋ねるのは野暮だと思って聞かなかった｡
あの時の先輩、見たことないくらい優しい顔してた｡もしお姉さんに記憶細胞さんっていう彼氏がいなかったら、先輩はアタックしてたんじゃないかな、なんて今なら思う｡
｢あ、Aちゃん!｣
｢ミヤちゃん、お疲れ｣
｢肺に行くの?一緒に行こ!｣
頷いて見せるとタタッて隣に並んできたミヤちゃん｡可愛いねえ｡
｢何考えてたの?｣
｢……そうだねえ｡恋は人を変えるなって考えてた｣
そう言って顔を向けると、ポカンと口を開けて赤くなっているミヤちゃんと目が合う｡
……そうか、この子も恋する乙女なんだよね｡しかも現在進行形で｡
思わずクスリと笑いがこぼれた｡
さて、私は熟れたりんごみたいになったミヤちゃんを質問責めにすることにしようか｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
