逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ6)

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重ねた謝罪_6 ページ6

静かにコーヒーをすすりながら、
その日の光景を思い出す松田の前で、
葵はラグの上に座ったまま俯いていた。

「…なぁ、アンタ、
大丈夫だったか？」

『え…

は、はい。
私は、どこも怪我してません…

松田さんに怪我をさせてしまって、
倉庫に残したままで…、あんな、危ない目に遭わせてしまった、のに…

私が、咄嗟にしがみついたから…、
あの場所に勝手に入ってしまったから…』

松田に視線を合わせず、
苦しそうに呟く葵。

「いや、アンタのせいじゃねぇって…。
アンタがいなけりゃ、
あの子ども、もっと辛い思いしたかもしれねぇだろ。

…とにかく、怪我してねぇなら良かった。

でも、その…、
”爆弾”は、大丈夫だったか…？」

そういう意味じゃなくて、
というように、
松田は付け加えた。

『え？』

「アンタの目の前で、爆破が起こって…

アンタ、前に言ってただろ。
爆弾を使うようなやつが許せねぇって。」

『あ..、

いえ、大丈夫です』

それまで俯いていた葵だったが、
ふ、と顔を上げ、サングラスを外した松田の目と視線を合わせ、
そう、答えた。
静かな怒りを含んだような声で。

「…、なぁ、アンタの、

アンタの父親は、結城警部、なのか…？
米花中央公園で事件に巻き込まれた…」

『…』

それは、あの日、観覧車の中で松田が聞くことが出来なかった問いだった。
突如、松田から飛び出した思っても見なかったその問いに、葵は黙り込む。

「あ、悪りぃ…
変なこと聞いたな」

謝罪の言葉の後、
しばし、沈黙が流れ、
松田がコーヒーをすする音だけが小さく響く。

『そう、です』

「…え」

『父は、警察官でした。
警視庁の、警部でした。

あの、米花中央公園で起こった爆弾事件で、
殉職した警官です。』

やっぱり、そうだったのか。
そう苦い顔を浮かべたのだが、

静かに、しかし、どこか淡々と答える葵に、
松田は小さな違和感を感じた。