ホイップ増量で。2【不死川実弥】

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あっという間に誕生日当日となった。カーテンを開ければ、燦々と輝く太陽の光が差し込みそれがあまりにも眩しいものだから、思わず目を閉じた。もう少しで4月を迎えるためか、頬を撫でるそよ風もほんのりと暖かいし、道路沿いに植えられた桜の木は段々とその蕾を膨らませている。これからのことを想像すれば胸が弾み頬が忽ち緩んでしまうのは、致し方ないと誰もが思うのではないかと考えていればインターホンが鳴った。



「はよ。」



誕生日おめでとう、A。と共に、朗らかな表情で微笑む実弥くんが、私の頭を撫でてそれから自身のものを私の唇に寄せた。羞恥心よりも先に私を掻き立てたのは、大切な人からの底無しの愛情による幸福感だった。嬉々として目の前の彼の胸に飛び込んで、力一杯に受け止めてくれる優しい実弥くんが心の底から好きだ。行くぞ、といつものように指を絡めて私たちは出発した。






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「大っきい、…すごい」
「Aの顔よりでけェな。」



ボコボコと所々が出ているハート型のお煎餅は、とにかく大きくてこんなのは初めてだった。その大きさにそぐわない小さな海苔から仄かに香る磯の匂い、濃口醤油で焼き上げられ網目にそった焦げ目が香ばしく、バリバリと音を立てて食べるというのも楽しい。

都心の大きな駅から出てる特急列車に揺られること約1時間半。私たちは有名温泉地に到着した。都心からのアクセスも良く、春休みシーズンということで多くの観光客で賑わっていた。駅に着いて直ぐ全長約500mほどには、お土産店や特産品をふんだんに使ったお食事処、風情ある外観の家屋の一角をリノベーションしたカフェなどが建ち並んでいた。所々から立ち込める温泉饅頭や食べ歩きスイーツの甘い香りが、食欲を存分に唆り石畳みを進む人々の片手にはそれぞれの嗜好品があり、観光のガイドブックをもう一方の手に収め、会話を弾ませていた。




「A。」



実弥くんに呼ばれて、彼の顔を見ればカシャリとシャッター音が響いた。何の前触れもなく切られたため、素っ頓狂な顔をしていた筈なのに、満足そうに笑う実弥くんに口を尖らせば、「可愛いなァ。」と返り討ちにされて黙り込むことしか出来なかった。

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