ホイップ増量で。2【不死川実弥】

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「温泉旅行なんて素敵だわ！」




ホワイトデーの翌日のバイト帰り、3月といえど、夜の厳しい寒さは健在している中、駅までの道中で蜜璃ちゃんに昨日のことを話せば、いつもの彼女らしく両手を組んでうっとりと可愛らしい声を夜の空に響かせていた。



「うん、すごいびっくりしちゃった、けど」
「けど？」



私の言葉に首を傾げる蜜璃ちゃん。私が臆病なばっかりに彼女にはいつも助けてもらってばかりで、話すことを躊躇していれば、「友達なんだから気遣わなくていいのよ」と笑ってくれた。彼女の人柄の良さに胸を打たれた私は、気づけば複雑な心情を吐露していた。

誕生日に好きな人と過ごせて嬉しい反面、初めてのお泊まりに困惑していること。自分には他人に身体を許した経験がなく、怖いと思いながらも彼と距離を縮めたいという矛盾が自分の中にあること。

相槌を打ちながら、真剣な眼差しで話を聞いてくれた蜜璃ちゃんは、私が話し終えたタイミングで「その気持ちわかるわ」と自分のことを話してくれた。




「私もね、小芭内さんとがその、初めてで…最初はすっごく怖かったの」



自分も怖くて彼を待たせてしまったが、彼は正直に言ってくれて嬉しかった、蜜璃ちゃんの心の準備が整うまで待つ、と言ってくれて安心出来たと話してくれた。



「不死川先輩は本当に優しい人だから何も心配しないでいいと思うわ」
「そうだね、うん」



ありがとう、と私が言えば、「最初は取り敢えず寝ておけばいいのよ」とさらりと蜜璃ちゃんが言うものだから、普段から想像出来ない一面を見て私は面白おかしく笑ってしまった。「あら私ったら」と紅潮した蜜璃ちゃんが可愛くて私はまた笑ってしまい、それが更に彼女の頬を赤く染めた。彼女の底抜けな明るさに、心の蟠りが解け軽くなった私は、ようやく誕生日が待ち遠しくなり、「明日お買い物に行きましょう」と言う蜜璃ちゃんに笑顔で二つ返事をした。

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