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「急にごめんね。」
「いや大丈夫だァ」
テーブルの前に2人で座った。少し息を切らしていた。急いで来てくれたんだと思い胸が締め付けられた。どうした、と頭を撫でる実弥くんの目を見た。実弥くんの目には私の顔が映りその表情は浮かないものだった。
「…、私が好きなのは実弥くんだよ」
私の頭を撫でる手が止まった。目を大きく見開いて驚きながらも、いつしかその顔は優しいものに徐々に緩んでいった。
「実弥くんと一緒にいたい、…実弥くんが好きだから、安心してほしい。」
唇がぴくぴくと痙攣して涙ぐむ声だった。実弥くんの手を取ってもう1度、実弥くんが好き、ちゃんと話してくると伝えた。すると彼は何も言わずに私に唇を重ねた。角度を変えて何度も何度も。後頭部を押さえられて逃げられず、いつしか実弥くんは私の服に手をかけた。咄嗟に待って、と必死に声を上げれば名残惜しそうに唇を離した。
「ごめん…、今日その、ダメな日で。」
「わ、悪りィ…ごめんな」
赤い顔で額を片手で隠しながら、詫びの文言をつらつらと実弥くんは並べた。その律儀で、可愛らしい姿に笑わずにはいられなかった。頬の赤さがさらに濃くなる実弥くんに笑うな、と言われてもそれはより笑いを誘うものでしかなかった。笑い声が部屋の照明の光に吸収されて、静かになった室内で泊まって行くか、と訊けば明日は1限だから帰る、となった。寂しさを隠しつつ、それでも駆けつけてくれた彼を見て心が温かくなった。
「気をつけて帰ってね」
「おォ。」
優しい唇を1つだけ落として、実弥くんは私の頭を撫でた。扉のノブに手をかけた実弥くんは赤い顔で振り向いた。髪を触っていた。
「…あったかくして寝ろよォ。」
言い捨てるようにして実弥くんは帰って行った。彼の思いやりにまた心が温かくなるのを感じた。僅かな時間だったというのに、室内に残る実弥くんの匂いが彼の残像を作り出しまるで近くにいるような気分を覚えて、この余韻に私は浸った。
「しっかりしなきゃ。」
こんなにも大切に思ってくれる実弥くんのためにも早く解決しなければと意気込んだ。しかしそれでも中々、上手くことは運ばれないと私は思い知らされ、焦燥感と不安感が募る一方だった。
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環(プロフ) - 蓮ちゃんんんんんん!番外編!さねみんバースデー書いてくれてありがとう!!!!喧嘩してるはずなのに心がぽっかぽかになりました…!!また蓮ちゃんのさねみん読めて幸せです!!最後のむいくんも最高でしたっ!ほんとにありがとう!実弥さんお誕生日おめでとう! (2021年11月29日 22時) (レス) @page50 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 蓮ちゃん…!番外編書いてくれて本当にありがとう!久しぶりに蓮ちゃんの通知が来て大興奮したよ!可愛くて初々しい二人にニマニマしてました!大好きなお話です!お蔵入りにならなくてホントによかったぁー!!! (2021年11月29日 21時) (レス) id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 蓮ちゃん番外編ありがとう!!!久々に蓮ちゃんのお話が読めて嬉しい!!すごく、幸せな気持ちになりました!!本当にありがとう!!たまに息抜きで戻ってきてな! (2021年11月29日 21時) (レス) @page49 id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 蓮ちゃん番外編!!書いてくれてありがとう!やっぱりれんれんの文章はとても読み応えがあって引き込まれます。ってコメを残そうとしてよしいつもの1コメの人まだいないよっしゃーって思ってたら取られてたぁぁぁぁぁぁ← (2021年11月29日 21時) (レス) @page50 id: 7ac5652e2e (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 番外編ありがとうそして久しぶりの夢書きお疲れ様おかえりなさい大好きです!!もう、ちょっと細部まで語りたいのでここではあえて書きませんが本当に文章といいキャラ同士の掛け合いといい全てが好きです最後のむいくんにもニヤケ止まらんかった!さねみんおめでとう! (2021年11月29日 21時) (レス) @page50 id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年2月25日 21時