ホイップ増量で。2【不死川実弥】

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私よりも先に動いたのは実弥くんだった。




「何言ってやがるてめェ。」



実弥くんは私を隠すように前に立つとAは俺の彼女だ、と今にも掴みかかりそうな勢いだった。そんな実弥くんに対してそれを決めるのはA先輩ですから、と冷静な時透くんはひょこっと顔を出して私を見た。




「A先輩、またね」



にっこりと笑って時透くんは歩いて行った。一体何だったんだと、2人して呆然と遠くなる彼の背中を見つめてしまった。我に返った私たちは、行こうと歩き出した。でも先程よりも実弥くんの私の手を握る力は強かった。






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「さーねみん、ご機嫌斜めですね」



いつものように時間ギリギリに到着した宇髄は、先に席に着く不死川を見るなりニヤリと笑いながら言った。当の本人はむくれた様子で宇髄を見て「気色悪りィな」と舌打ちをした。3年のホームルームが始まる中、宇髄が何があったと聞けば不死川は最初は躊躇っていたものの、朝の駅での出来事を宇髄に話した。話しているうちにだんだんと苛立ちを隠せなくなった不死川は、無意識のうちにホワイトボードの前の教師をねめつけていた。



「面白い1年だなそりゃ、最高」
「あァ？」
「まあ落ち着けって不死川」



目に涙を浮かべながら必死に笑いを堪える宇髄に、不死川は声が張ってしまうのを抑えながら睨んだ。宥めるように宇髄は言うものの、動揺を隠し切れていない不死川は頭を掻いたり、頻繁にAから連絡はないかと落ち着きがなかった。



「にしても、やるなあその時透って1年。」



宇髄の感心したような言葉など耳には入らないぐらい不死川は上の空だった。クリスマス翌日の時のような友を見て、何も起こらないことを祈る宇髄は「Aちゃんなら大丈夫だろ」と言うが、不死川にとっては気休めにしかならなかった。



「実弥くん」



自身を呼ぶAの笑顔を思い浮かべて、緩んだ頬を隠すように不死川は机に伏した。「信じるだけだ。」と隣の宇髄にも聞こえないぐらいの小さな声で不死川は言った。

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