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この間はまだ蕾だったのにもう桜の季節となった。4月の上旬、昨日は大学の入学式で、在学生は今日からだった。とは言っても初日は基本的にオリエンテーションやゼミの発表しかない。誰と一緒になるんだろう、と思いながら実弥くんのアパートの前に向かえば彼は外で待っていてくれた。
「おはよう」
「おォ。」
一緒に大学に行こうと待ち合わせた私たちは、どちらからともなく指を絡め歩き始めた。実弥くんが繋いだ手をぎゅっとするから、私もぎゅっとすればもっとぎゅーっと握られた。何これ、と2人で笑った。他愛のない話をしながら駅に着き、電車に揺られた。実弥くんは混雑した車内で壁側に立たせてくれた。
…今日の実弥くんもかっこいい。
グレージュのステンカラーコートとライトブルーのオープンカラーシャツを合わせていた。黒のピアスがアクセントのようだ。
大学の最寄駅に着けば、多くの学生たちが憂鬱そうな顔をしていた。およそ2ヶ月間の春休みが終わるとなれば、思わず顔を顰めてしまうのは仕方ないことだ。その中で、新入生の姿もちらほら見えた。どこかぎこちない初々しい姿に、去年の自分を思い出して懐かしくなった。すると私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「…A、先輩?」
「時透くん。」
腰に届きそうなほど艶のある黒髪を伸ばす。毛先は灰がかった青緑色をしていた。毛先の色と同じ瞳で、中性的な顔立ちの彼は私を見つけるなり小走りで隣に来た。少し背が伸びた様子の彼は、頭一個分私よりも大きかった。頬を綻ばせながら彼は「A先輩だ」と嬉しそうだった。
「久しぶりだね」
卒業以来かな、と言えば時透くんは実弥くんをじーっと見ていた。その強い視線に思わず実弥くんはたじろいだ。誰、と私を横目に見た時透くんに私は答えた。
「…不死川実弥先輩、…彼氏、です。」
「ふーん。」
あまり興味が沸いていない様子の時透くんと、ピクピクと顳顬が動く実弥くんに挟まれて、私は冷や汗が止まらなかった。すると時透くんの口から信じ難い言葉が紡ぎ出され私は呆然と立ち尽くした。
「A先輩、僕と付き合って。」
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環(プロフ) - 蓮ちゃんんんんんん!番外編!さねみんバースデー書いてくれてありがとう!!!!喧嘩してるはずなのに心がぽっかぽかになりました…!!また蓮ちゃんのさねみん読めて幸せです!!最後のむいくんも最高でしたっ!ほんとにありがとう!実弥さんお誕生日おめでとう! (2021年11月29日 22時) (レス) @page50 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 蓮ちゃん…!番外編書いてくれて本当にありがとう!久しぶりに蓮ちゃんの通知が来て大興奮したよ!可愛くて初々しい二人にニマニマしてました!大好きなお話です!お蔵入りにならなくてホントによかったぁー!!! (2021年11月29日 21時) (レス) id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 蓮ちゃん番外編ありがとう!!!久々に蓮ちゃんのお話が読めて嬉しい!!すごく、幸せな気持ちになりました!!本当にありがとう!!たまに息抜きで戻ってきてな! (2021年11月29日 21時) (レス) @page49 id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 蓮ちゃん番外編!!書いてくれてありがとう!やっぱりれんれんの文章はとても読み応えがあって引き込まれます。ってコメを残そうとしてよしいつもの1コメの人まだいないよっしゃーって思ってたら取られてたぁぁぁぁぁぁ← (2021年11月29日 21時) (レス) @page50 id: 7ac5652e2e (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 番外編ありがとうそして久しぶりの夢書きお疲れ様おかえりなさい大好きです!!もう、ちょっと細部まで語りたいのでここではあえて書きませんが本当に文章といいキャラ同士の掛け合いといい全てが好きです最後のむいくんにもニヤケ止まらんかった!さねみんおめでとう! (2021年11月29日 21時) (レス) @page50 id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年2月25日 21時