ホイップ増量で。【不死川実弥】

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「Aちゃん」



25日ももう終わる。旅行から帰ってきた蜜璃ちゃんは、小さなキャリーケース片手に駆け付けてくれた。蜜璃ちゃんの不安げな声と私の嗚咽が止まない部屋は酷く寒くて痛い。Aちゃん、ともう1度私の名を呼び前みたいに蜜璃ちゃんは抱きしめてくれた。


＿＿＿＿＿好き、と言えなかった。


いっぱいいっぱい鏡の前で、部屋にあるぬいぐるみに向かって練習した。伝えたいことを何度も考えて。



「…いっつも、上手くいかないっ。」



肝心な所でいつも私は逃げてばかりだ。元カレの時もそう、今回もそう。どうして自分はこうも臆病なんだ、と腹立たしくて情けなく呆れることしか出来ず涙が止まらなかった。



「緊張して、何も出来なかった」
「…緊張して当然だと思うわ」



「そんなに自分を責めないで、悲しいわ。」と言う蜜璃ちゃんの顔は、彼女から出た言葉の通り酷く悲しそうな色が浮かんでいた。透き通るような翡翠の眸子には、うっすらと水の膜が出来ていて今にも溢れてしまいそうだった。




「私もね、勇気が出なくて伝えられないことたくさんあるの。
……それでもね、頑張って勇気を出して伝えようと思うのは、小芭内さんのことが本当に大好きだからなの。」



「Aちゃんも不死川先輩のこと大好きよね？」と首を傾げる蜜璃ちゃん。その桃色と鶯色の柔らかな毛束が私の手を撫でて少しくすぐったい。優しくてまるで太陽のような温かい微笑みに、私は大きくうん、と頭(かぶり)を振った。その拍子に、涙の粒がまたいくつも落ちた。



「Aちゃんなら大丈夫よ、次は絶対に告えるわ」
「うん…う、んっ。」



蜜璃ちゃんは「大丈夫よ、一緒に頑張りましょう」と、泣き噦る私の背中を優しく摩り続けてくれた。泣いているせいで呂律が回らず、伝わっているか定かではないが、ありがとう、と何度も口にした。

泣き止んだ頃にはクリスマスは終わっていた。「お泊まり会って楽しいわ」と、旅行から帰って来てすぐで疲れているはずなのに、私に気を遣って笑顔でそう言ってくれた蜜璃ちゃん。彼女の心遣いに、幾分気持ちが和らいだ私は狭いベッドの中で眠りについた。

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