Where is She？〜Donghae〜

14:小さな痛み ページ14

*



晴れやかな笑顔を向けるｲﾄｩｸさんの後ろにいる男性を見た瞬間

驚くと同時にｲﾄｩｸさんの言葉が頭に蘇った。


『ナナちゃん目当てで通ってる』


そうか……
ﾄﾞﾝﾍさん、ナナさん目当てに通ってたんだ。


そりゃあそうよね。
女の子女の子してて、キラキラしてかわいいナナさん。


ニコニコ微笑むナナさんに微笑み返すﾄﾞﾝﾍさんを見て、なぜだか胸がチクリとして。


その痛みが何なのか……
それを知ってしまったら元には戻れない気がして、考える事をやめた。



「楽しくない？」

「……え？」

「さっきから上の空みたいだから」

「そんな事ないですよ？」

「そう？ならいいけど。ここからの眺め、綺麗でしょう？」

「そうですね」


時折吹いてくる爽やかな風が、後ろで縛った髪を揺らす。


ジュースを買いに行ってくると言ったﾄﾞﾝﾍさんとナナさんはしばらく帰ってこない。


「今度は……二人だけで来ませんか？」

「え…？」

「もう、付き添いはいらないでしょ？それにあいつらも上手く行ってるみたいだし」

「そう…ですね」

「ホントに？あ、ここね。夜景も綺麗なんですよ。今度は夜景見に来ましょう」

「ふふ、はい」

「なに？」

「いえ」


さっきまで不安そうだったのに。
私の言葉で明るい笑顔になるｲﾄｩｸさんはやっぱりとても優しい。

その間も、チクチクと胸を刺す小さな痛みを逃がすように背伸びした。



それから何度かドライブして、ご飯を食べて。


「俺と、付き合ってくれる？」


そう言われた日。
目の前に膝間付いたジョンスはあの日と同じ不安な表情で私を見上げて。


後手に隠していた真っ赤な薔薇の花束を差し出すジョンスがとても素敵で。


この人と付き合えば、きっと幸せだろうと思った。


そして、あの時感じた痛みは、錯覚だったと片付けて＿＿


「はい…私でよければ」

「ホントに！？やった……！！」

「きゃっ」


薔薇の花束を持ったままギュウギュウと抱きしめられて驚く。


「ちょ、、ジョンス花束…」

「あっ！いけない！」


パッと離して花束が無事か二人で覗き込んで。


「無事みたい。良かった〜」

「ホント、よか…」


その近さにまた驚いて、一瞬絡む視線に恥ずかしくなって
離れようとする私の首を捕まえてそっと触れるだけのキスをした。


そのまま、おでこをチョンと付けて。


「ありがとう…大切にする」

「私も…」


そう、これで良かったんだって、

そう思ってた。あの日までは＿＿



*

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