お医者さんのやぶくん［HSJ］

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ひかるサイド


光「っ…」


力いっぱい口を結んで、躊躇なく侵入してくるそいつに耐える


必死に我慢していると、


宏「光〜、口で息して？」


…口？…あ、そっか


光「っはぁー…」


今日、2回目の麻酔
鼻の奥まで入ってくるゼリー状の麻酔に、無意識に息を止めていた


その上、チューブまで入れられて…
麻酔がこんなにしんどいとは思わなかった…


ったく、鼻からでも苦しいじゃないか。なんて思わず心の中で悪態をつくと、


宏「光が息止めるからじゃん笑」


…なぜかバレてる


光「何も言ってないし」


宏「顔見たら分かるって笑」


何だよそれ…


先「はいはい、喧嘩しないの笑」


喧嘩じゃねーし…


と思ったと同時に薮の口からそっくりそのまま俺の心情が…


宏「何で喧嘩になるんだよ笑」


俺は今日先生に会ったばっかりでそんな強く言えない分、薮がいるのは便利かも笑


先「薮先生、普段どんな感じ？医者やってる時はしっかりしてるんだけど、それ以外はどうもねぇ…あ、それにさ…」


どうやら先生はお喋り好きらしい
俺が軽く相づち打つだけでドンドン話が進んでいく笑


薮と気が合いそうだな…


宏「おーい、始めるぞ」


先「お、そろそろか。麻酔も効いたし、バッチリだね」


光「ん…」


急に緊張してきた…


準備のための小さな音ですら、緊張の材料にしかならない


そんな中、ポンと肩に温かい手が触れた


見上げると、いつになく優しい顔をした薮


宏「麻酔頑張ったから大丈夫。な？」


そんな薮の声は、流れるようにスッと俺の中に入ってくる


光「…うん」


今ならいける気がする


宏「よし、やろっか」


薮がそう言うと、黒いカメラが目の前まで迫ってくる


いよいよか…
いざ目の前にすると、なんか怖いな…


先「八乙女くん、リラックスね」


先生が背中をゆっくり擦ってくれる


光「ふぅー…」


どうしようもないこの緊張を逃がそうと、長めの息を吐く


宏「入るよ〜」


光「んっ…」


……きた…のか？…全然感覚がない


自然と瞑っていた目をゆっくり開けてみる


目の前にはカメラを握る薮の手


ちょっと下に目を向けると、確かにそれは俺の鼻の中


あれ…意外と大丈夫かも


先「案外大丈夫でしょ笑」


密かにほっとしていると、先生が俺を見て言った


うん。口で息するのはちょっと疲れるけど、苦しいのより全然マシ


そう安心していると、薮が小さく声を漏らした


宏「ごめん、ここちょっと頑張って」


えっ…？

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