WEST Loves You -3rd-【JW】

＊ ページ18

そんなこんなで

いつもはすぐ終わる喧嘩も長期戦。


気付けばバレンタイン前日になっていた。


今年は例年以上に渡しにくいな。

もう作らなくてええかな……



ぶっちゃけあんなに料理本を見ても

毎年作るのはハートの形で型どったチョコ。

それを２、３個作ってただけ。



『やからって自分の気持ち無視するん？』


ふと頭に大ちゃんの言葉が流れる。

無視……か。何年も無視してきたこの気持ちに。




「……よし！作ろう！！」



私以外誰もいない家に

私の気合い入れの声が響いた。


今年はもう卒業するんだ。

臆病でヘタレな私から卒業するんだ。




「………よし。」



今年はいつもとは違う。

いつものサイズの２倍のチョコだ。


ハートの形のチョコの真ん中には

チョコペンで【スキ】と書いた。


正直痛すぎるがもう吹っ切れた。

大ちゃんになんて言われようがどうでもいいんだ。


渡せればそれで十分だ。



______


『じゃ俺ら帰るわ！』


重「じゃあなー！」


「………しげ！」




大ちゃんと仲良しの人達が帰った瞬間、

私の声が教室に響いた。


今いるのは私と大ちゃんだけ。



重「何？」


「………渡したいもの、ある」


重「………おん、何くれるん？」


「………下手くそやけど、コレ。」




腰を直角に曲げてお辞儀し

大ちゃんにチョコを差し出した。


しばらくすると私の手から

チョコが無くなっていた。


すると突然この場から立ち去りたくなって。




「……じゃあね！また明日！」




そう言ってリュックを持って

教室を後にするはずだった。


掴まれた右腕。

掴んだ相手は一人しかいない。




重「待てって」


「……離してよ」


重「そうやってまた自分から逃げるん？
俺がそんなこと絶対させへんから。」


「………分かんないよしげには」


重「このチョコに書いてること
まんま言ってくれればええ話なのに。」


「……それを言っちゃったら」


重「いいから」




大ちゃんを背にしてるから

どんな顔をしているか想像も付かない。


そうだ大ちゃんの言う通りだ。

弱い自分から逃げてるだけだ。


変わるって決心したのに

自分の気持ちまでも裏切るの？私は。




「………好き！
大ちゃんが！昔っから好き！」

＊→←＊スキ #D.S

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