35.世界を色付けてくれる人 ページ34
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智「A！こっちこっち！」
「あ…、ごめんねお待たせしましたー」
*「おっそーいA！もうみんな結構飲んでるよー」
＊「あっれぇ、すっげぇお前今日可愛く見える〜」
*「あぁ、タケシかーなり酔ってるから気にしないで！(笑)」
「了解(笑)」
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人でむせ返る夜の電車に揺られて、数分。目的地がある駅で降りてしばらく歩いて
智くんから教えてもらった、居酒屋さんに入ってキョロキョロしてるとすぐさま智くんが私を見つけてくれて声をかけてくれる。
ほっと胸を撫で下ろして、ごめーんって笑いながら既に出来上がっているテーブルに座った。
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智「生でいい？」
「あ、うん」
智「すみませーん、生ふたつお願いしまーす」
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いそいそと首に巻きつけてあったマフラーを外したり、コートを脱いだりしてると不意に左隣に座っていた智くんにそう言われて
もうそれが当たり前かのように首を縦に振って、智くんも当たり前のように注文を済ませる。
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焼き鳥や、枝豆。煙たい空気が漂うこの空間が、実は案外好きだったりする。
ただ、煙草の煙はいつまで経っても苦手だった。
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智「A、今日バイト最後の日だったんでしょ。主任どうだった？」
「あー…、随分引きとめられた。主任優しい人だし面白いから私結構懐いててさ」
智「うんうん」
「『やめたら寂しくなるなぁ』って10分程(笑)」
智「ふは、なっげーな」
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今日の飲み会は大学のサークルの飲み会だった。
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うちのサークルは比較的規模も小さくて、みんながみんな仲がいい。
私たちはもう現実に目を向けなければならない時期にすっかり入っていて集まれるうちに集まろうと
今やアルコールが回って使い物にもならないタケシくんが言い出した今日だった。
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そもそもサークルなんかに私はさらっさら入るつもりはなくて
ただ同じ大学を受験して、同じ学部に入った智くんが『デザインとかさ、美術系のサークルあるの。一緒に入らない？』って誘って来たのが始まり。
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正直、美術なんていつも五段階評価で三行けばいい方で
絵画を見たって何がどういいのかサッパリわかんなかったんだけど智くんの強い押しに勝てなくて
「バイトと並行できるなら」という条件で入ったんだ。
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