34.ハッピーエンド ページ33
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電車がものすごい勢いで目の前にやってきて、風がブォォォと私の髪の毛を容赦なく流していく。
その強い風と共にもしかしたらこのマフラーの匂いもなくなってしまうんじゃないかと思ったら怖くて
ギュ、としっかりとマフラーを掴んでそこに顔ごと埋めた。
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ピロン、という着信音でハッと我に帰る。
慌てて私はステップを踏んで、電車に乗り込んだ。
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ーーー…ものすごい昔の話を、思い出した。
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高校生。二宮さんが、確かに私の初恋だったあの時。
私はもう大人になった。もう大学生になって制服なんか脱ぎ捨ててやった。
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もう私は大学三年生。ハタチ。
もう子供じゃないのに、あなたが隣にいない。
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二宮さんとはもう何年も会っていなかった。
あの日。私が智くんを好きになる、と決めた日。二宮さんが堀口先生と一緒に歩いてたあの日から
どの時間帯の電車に乗っても、二宮さんの姿が見られることは一度もなくなった。
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朝も、夜も。引き際が見つけられなかった私はいろんな時間帯を試してみたけれど二宮さんが見つかることはなくて
もう一度。たったもう一度だけ、話が出来ればけじめがつけれる。智くんに堂々と好きと言える。
そんなことを言い訳にして、高校生ながらに頑張って二宮さんを探した。
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いつか貰った名刺に記されていた会社に行ったけど、「二宮というもの弊社にはおりませんが…」って追い出される。
メールしても返ってこない。電話したら携帯は解約されていた。
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つまり。それ以外の情報を知らない私には、それ以上二宮さんを見つける術はなくて
あの日
堀口先生と仲睦まじく電話に乗っていった姿が
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私が見た、二宮さんの最後の姿。
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「…」
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音信不通。そんなこと現実にあるんだ…、って二宮さんに貰ったマフラーをぎゅっと掴んで
制服のスカート翻した数年前。
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私はもう大学生。もう就職。
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ーーー…二宮さん。
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【A、今どこにいる？もう始まってるよ、飲み会】
【ごめん、智くん。今電車乗ったところ。もうすぐで着くよ】
【りょーかい。待ってる】
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今、あなたはどこで何をしていますか？
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