21.何系男子？ ページ20
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和也「さとしくん？」
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二宮さんの薄い唇から「さとしくん」っていうワードが零れ落ちる。
そのことがなんだか不思議でくふふ、って心の中で笑ってみた。
車の振動で少し肩が揺れた。
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「大野智くん、って言うんです。この前駅で一緒にいたんですけど」
和也「あー…、あの子」
「猫みたいな男の子ですよ」
和也「仲いいんだ、やっぱり」
「仲は良い方だと思います。ずっと寝てるんですけど…」
和也「それで猫？」
「はい。猫系男子ってやつですね」
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チラリ、と横目を伺う。
窓の外を流れる景色はいつもと同じなのに。なんなら変哲もないただの街なのに
何故だろう。二宮さんが運転する車の中なら、すべてがキラキラとして見える。魔法？
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私は今思えばすごいことをしてもらってるんだ。
好きな人の車に乗せてもらえて。
好きな人の助手席に乗れて。
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特等席、ってヤツ。
煙草の臭いだって、匂いに変わっちゃう。
やっぱり二宮さんって魔法使い？
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和也「じゃ、俺は何系男子？」
「えー…。二宮さんは」
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うーむ、と腕を組んで悩む。
信号で車が止まって、真剣に悩む私の姿を見て二宮さんがちょっぴり意地悪な顔で微笑む。
ちょっとずるい。見てないふりしてたけど今の顔見てた。今の顔はかっこいい。いつもかっこいいけど、困るぐらいかっこいい。
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本当に勘弁してほしい。
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「…柴犬、ですかね」
和也「種類まで？(笑) え、俺柴犬？」
「なんか…すごい柴犬っぽいです。雰囲気？」
和也「それ言ってきたのAちゃんで二人目よ。俺そんなに柴犬に似てんのかなぁ」
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車が左折する。
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モヤ…とした霧みたいな感情が一瞬にして胸のあたりを支配する。
二人目？前に柴犬、って言った人がいるんだ。
女の人かな？それとも同期さんとかの男の人かな？女の人だったら…どうしよう。
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どうしよう、なんて思ったって仕方ないのに。
私は二宮さんの彼女でもなんでもないのに。
勝手にアップダウンして、めんどくさい女。
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膝の上で握っていた拳に力を込めたけど、もっともっとギュと力を込める。
すると、それを待っていたかのように隣から「着いたよ」という声がした。
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