Day.6-3 ページ19
「私はずっと孤独だった」
「……」
「この世界のこの場所には、私しかいなかった」
Aはポツリポツリと語り始めた。
大切なことを曖昧にして、わかりにくいままに。
「そもそも、奏汰くんがここにいることがびっくりなんだよ？」
「ぼくが……？」
「うん。今まで私はここでひとりきり。ここから動くこともできないの」
彼女の涙から流れていた涙は、いつの間にか止まっていた。
白いワンピースが風に揺らぐ。
長い黒髪と指先から、水滴が垂れる。
白い肌に日焼けは一切なかった。
「奏汰くんに会えて嬉しかった。今までずっと寂しかった」
「ぼくも、うれしいです。Aにあえて」
「ありがとう。でも奏汰くん、昨日体調悪かったんでしょ？」
「……はい」
「もうそろそろ危ないよ。会うのは明日までにしよう」
奏汰は納得できないのか、顔を顰めた。
理由すらハッキリと話されずにこんなことを言われたら、怒るのも仕方がないだろう。
奏汰がAの手を取っても、彼女は何の反応も示さなかった。
冷たい手先に、奏汰の熱が伝わる。
「ぼくは、あなたといっしょに」
Aはそんな彼の言葉を、かき消すように重ねた。
彼女はその手を、自身の震えを止めるように握り返した。
「明日、全部話すから」
それしか答えずに。
握られた手も、自分から離してしまった。
「長い間、ここにひとりで生きていた気がする。朧げだけど、夏は2回くらい来たから」
「いまは『なつ』ですからね」
「うん……それでね、奏汰くんに言わなきゃいけないことがあるんだ」
「ぼくに？」
Aは「奏汰くん」と呟いて、思いっきり奏汰を抱きしめた。
水滴が彼の制服に染み込んで、水玉を作る。
奏汰はほんのり顔を赤くして、ゆっくりと抱きしめ返した。
……この時からか、なんとなく奏汰の中で、Aが言わんとしていることがわかったような気がした。
肌は白く冷たかった。
まるで、彼女だけ冷やされているように。
「奏汰くん、好きだよ」
声が、震えていた。
奏汰は言葉が見つからず、何も言えなかった。
「……A」
「……」
「ぼくは、Aが」
「ごめん、それは明日聞かせて」
「いまでは、だめなんですか」
「……私は、まだここにいたいから。ごめん」
その言葉の真意はまだわからない。
何も言わず、言うことが出来ず、その日は別れた。
……ふたりが出会って、6日目。
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うーちゃん - 感動しました！！儚い恋ですね☆ (2016年9月14日 20時) (
レス) id: 822060fcb6 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - あ、、泣きました…。すごくいい話で…完結おめでとうございます！！ (2016年8月19日 17時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 菜舞さん» わ〜〜ありがとうございます（ ; ; ）儚い感じを目指しているので、そう言っていただけると本当に嬉しいです…！ (2016年8月11日 22時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - こんなに素敵な小説初めて見ました！！！儚い感じがすごく好きです… (2016年8月11日 21時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 湊朔さん» ありがとうございます！まだまだ未熟ですが、もっと魅力的な世界観を目指して頑張ります！（ ; ; ） (2016年8月10日 9時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺり | 作成日時：2016年8月9日 15時
