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｢酷いわあ…、僕がひとりの愛だけじゃ満足できひんって、Aちゃんがいちばんようわかっとるのに｣
態とらしく傷ついたような表情で彼は言う。それから私の足元へゆるりと跪き、さっき落としたカッターを拾い上げた。にっこりと微笑んだ彼が、綺麗な指先でカチカチと刃を鳴らしながらこちらへ距離を詰めてくる。
｢な、寂しかったら死んでまうんやろ？うさぎさんみたいでかわええやん｣
｢…ぁ、｣
｢なあ、殺してもええ？｣
息の根が気道を掠め、ヒュ、と喉が鳴る。彼は、｢…なんてな｣と呟いて、つまらなそうにカッターを放り投げた。かしゃんと味気ない音が、私の薄弱な意志を揶揄して砕いた。彼は、私に端から死ぬ気なんてないとわかっている。ただの構われたがりなメンヘラだって、わかった上で私を馬鹿にしてるんだと思ったら恥ずかしくて頭が煮えるように熱かった。
例えばもし、もし仮に、私が心から死を望んだとして、果たして彼は悲しんでくれるだろうか？
(…いや)
変わらないだろうな。私には彼しかいないけど、彼はそうじゃないから。きっと普段と何ら変わらない嫋やかな声で｢うん、で？｣と首を傾ける。そしてもう二度と会ってくれない。そうしたら私はどうやってその先の人生を生きていけばいいのだろう？どうやって息をすればいいのだろう？
(い、きを)
突然上手く呼吸が出来なくなる。辛うじて浅く速く呼吸を繰り返しながら背後のベッドにへたり込むと、彼がだらんと垂れた私の指先を絡めとる。生ぬるい熱が伝ってくるや否や、ぎ、とベッドを軋ませる音と共に、誤魔化すようなキスを落とされた。全てを見透かす深い藍が、可哀想に、と憐れむように、私を見つめる。
｢…ゃ、きらいにならな、で｣
｢もう死ぬとか言わへん？｣
｢いわな、…言わ、ない…からっ…｣
橙色の電飾が、彼の背後でちりりと揺れた。
｢そしたら、いっぱい甘やかしてあげような｣
ああ、鉛より重い私の想いを抱いて、君が底まで沈んでくれたらどんなに幸福か。そんなつまらない夢をみては覚めてを繰り返し、その度ごとに思い知った。いつも溺れてるのは私だけなんだって。だけどこれからも私を絶望に突き落とすのは君だけであってほしいと思うし、そこから私を掬い上げるのも君だけじゃないと絶対にダメだ。
そういえばよく、一度クスリをやると元の健康な身体に戻ることは不可能だと聞く。
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うろせ。(プロフ) - Kaniskaさん» 激励のコメントありがとうございます❀.(*´ω`*)❀.そのお言葉だけで次回の更新も頑張れます…！引き続き楽しんで頂けましたら幸いです。 (2022年1月5日 23時) (
レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
Kaniska(プロフ) - エンゼルウィング、とても好きです…最後の説明の一言で、もう心臓をやられました。ほんとうに好きです。更新頑張って下さい (2022年1月2日 21時) (レス) id: 83384417ab (このIDを非表示/違反報告)
うろせ。(プロフ) - ゆうなさん» コメントありがとうございます(❁´ω`❁)季節外れのバレンタインネタでしたが、楽しんで頂けたようで光栄です。引き続きよろしくお願い致します！ (2021年11月24日 17時) (レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - きゃー！！！！！！！！！！！！！新作おめでとうございます！！！そしてありがとうございます！初っ端からciくんのお話でバレンタイン！夢主とciの会話が甘々で可愛いぃぃ！！これからも頑張ってください！！！！！！！！ (2021年11月5日 2時) (レス) @page2 id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うろせ。 | 作成日時：2021年11月4日 17時
