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｢Aさん｣
やわらかな声で名を呼ばれ、びくりと肩が揺れる。今度こそ何か様子がおかしいと気がついて、だけどもう、遅かった。
｢私は完全になれなくてもいい｣
…何それ、いみがわからない。
｢…は、どうゆう｣
｢ご愁傷様でしたね。思いがけないご不幸で…さぞ辛い思いをされたことでしょう｣
｢ね、ねぇ、何のはなししてるの｣
｢隠さなくてもいいんですよ｣
だって、エミさんがあのことを知っているわけ
｢知っています、貴方のことならなんでも｣
一縷の望みはそんな言葉で容易く砕かれた。それからするりと隣の椅子へ放っていた私の鞄へ手が伸ばされ、制する間もなく抜き取られた、一通の手紙。
だめ、それは彼、の
『お前のせいだ』
内容を思い出してずきりと頭が痛んだ。目眩がした。ああ、なんで、いくらエミさんが物知りだからって…こんなことが有り得る？
｢遺書、ですね」
｢ぁ、わ、私の、せいじゃない。彼が、勝手におかしくなったの！最初は、普通だったのにどんどん、束縛が激しくなって…私だって大切にしてた…！それなのに勝手に病んで、それで、彼、かれは｣
｢…ああ、そこは同じで安心しました｣
"同じ"？耳に引っかかった言葉の真意を確かめようと口を開け、すぐに止めた。聞かなくても、解ってしまったから。
今この瞬間エミさんは、数日前、自ら命を絶った私の恋人とまったく"同じ"目をしていた。私を愛しているから、愛しているから死ぬのだと言って宣言通り本当に死んでしまった、あの人と。
倒したカップからどろりと溢れ、テーブルクロスに染み広がっていく珈琲のようだった、彼の瞳から滲み出るその愛情と狂気の見てくれは。
エミさんが一歩こちらに歩み寄る。その動作に過剰に反応して立ち上がり、テーブルに腰を打つけてカップの中身を零してしまった。そのことに動揺をちらつかせた瞬間、両手首を取られて身動きを完全に封じられる。しまったと思った。Aは、いよいよ逃げ出したい気持ちで、祈るように目の前の男を見上げた。
｢Aさん、私にしてください｣
｢なりますから、代り役。それでも、いいですから。あの、えっと、以前の恋人と私…どこがどれだけ違っていますか？｣
｢ね、ほら。言ってください｣
浅い呼吸を繰り返しながら、Aは彼の背後で揺れるユーコミスの花に目をやった。彼が、どうせ偽物だと哀れんだユーコミス。彼に慎ましやかな声で、｢大事にしたい｣と吐露させた小さな星型の花。
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うろせ。(プロフ) - Kaniskaさん» 激励のコメントありがとうございます❀.(*´ω`*)❀.そのお言葉だけで次回の更新も頑張れます…！引き続き楽しんで頂けましたら幸いです。 (2022年1月5日 23時) (
レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
Kaniska(プロフ) - エンゼルウィング、とても好きです…最後の説明の一言で、もう心臓をやられました。ほんとうに好きです。更新頑張って下さい (2022年1月2日 21時) (レス) id: 83384417ab (このIDを非表示/違反報告)
うろせ。(プロフ) - ゆうなさん» コメントありがとうございます(❁´ω`❁)季節外れのバレンタインネタでしたが、楽しんで頂けたようで光栄です。引き続きよろしくお願い致します！ (2021年11月24日 17時) (レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - きゃー！！！！！！！！！！！！！新作おめでとうございます！！！そしてありがとうございます！初っ端からciくんのお話でバレンタイン！夢主とciの会話が甘々で可愛いぃぃ！！これからも頑張ってください！！！！！！！！ (2021年11月5日 2時) (レス) @page2 id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うろせ。 | 作成日時：2021年11月4日 17時
