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真白な羽にしがみついて放さないAちゃんを、優しく撫でてやるでもなく冷たく引き剥がすでもなく、薄目を開いてただ観ていた。彼女はきっと、大丈夫になんかなりたくないのだろう。俺の事なんか忘れて健康に生きてほしいと思っているのは、誓って嘘じゃない。けど、憔悴しきって最早何も映さない瞳に、抱き締めた身体が酷くやせ細っていたことに、どうしようもなく安堵している自分がいる。｢もう十分｣だなんて口にしながら、本心は飛び上がるほどに嬉しかった。彼女が、世界中でたった一人彼女だけが、苦い珈琲を薬紛いに流し込んでは俺を忘れられずにいることが。
最低な感情を燻らせていると、先刻まで微動だにしなかった彼女がふいに顔を上げた。愛おしそうな声で｢鬱｣と大した価値もない俺の名を呼ぶ。
｢わたしを｣
｢救いにきてくれたの？｣
この感情を、恋と呼ぶのはあまりにひどい話で俺にはできない。なのに脳内に浮かぶのは｢そう、君を救うため、神様が俺を天使の姿にしたんやで」なんて歌の歌詞でもありえない、歯が浮くような台詞ばかりだ。狡い。あの日飛び降りなければ、彼女を特別だと思うこともなかったくせに。
｢あ…、そう、そうや…｣
(違う。早く酷くして、突き放したげな…)
｢そうなんだね、ありがとう｣
(一生死人に固執したままとか可哀想やろ)
｢…好き、ずっと、そばに居たい｣
(俺はAちゃんの恋人でも何でもないのに)
｢本当は｣
(の、に、なんで)
｢生きてるときに伝えたかった｣
その先はもう聞くに耐えなくて、無理やり唇を重ねて彼女の口を塞いだ。舌に絡まるコーヒー味はいつかの夜を彷彿とさせ、初めて死んでしまったことを後悔した。いつか身を投げた時と同じで、また自分本位な感情ばかりが蜷を巻いている。未練なんてどうでもいい。現世に留まれるならそんなもの晴れなくたって構わない。誰でもいいから俺を忘れないでいてほしい。彼女がこのままずっと、可哀想で不幸せなまま縛り付けられていればいい。
引いた銀糸が途切れたのを見計らって、俺は彼女の目を真っ直ぐに見て告げる。
｢…なんで。今からでも、遅ないやん｣
天使なわけがない
．
【エンゼルウィング】天使の翼
また、
鳥の羽に見られる奇形。エサの過剰摂取による栄養バランスの偏りが原因だと言われている。患った鳥は空を飛べなくなってしまう。
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うろせ。(プロフ) - Kaniskaさん» 激励のコメントありがとうございます❀.(*´ω`*)❀.そのお言葉だけで次回の更新も頑張れます…！引き続き楽しんで頂けましたら幸いです。 (2022年1月5日 23時) (
レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
Kaniska(プロフ) - エンゼルウィング、とても好きです…最後の説明の一言で、もう心臓をやられました。ほんとうに好きです。更新頑張って下さい (2022年1月2日 21時) (レス) id: 83384417ab (このIDを非表示/違反報告)
うろせ。(プロフ) - ゆうなさん» コメントありがとうございます(❁´ω`❁)季節外れのバレンタインネタでしたが、楽しんで頂けたようで光栄です。引き続きよろしくお願い致します！ (2021年11月24日 17時) (レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - きゃー！！！！！！！！！！！！！新作おめでとうございます！！！そしてありがとうございます！初っ端からciくんのお話でバレンタイン！夢主とciの会話が甘々で可愛いぃぃ！！これからも頑張ってください！！！！！！！！ (2021年11月5日 2時) (レス) @page2 id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うろせ。 | 作成日時：2021年11月4日 17時
