【ci】狡いオランジェット ページ1
．
｢チーノくん｣
｢あ、先輩｣
今日は2月14日バレンタインデー。廊下でばったり出くわした一学年下のチーノくんは、可愛らしいラッピングが施されたお菓子をぎゅうぎゅうに詰めた紙袋を手に持っていた。かくいう私も手持ち鞄をぶら下げて、これから友だちや先輩後輩にお菓子を配り歩こうとしていたところだ。
｢…おモテのようで｣
皮肉を込めてそう言ったつもりが、｢あ〜。えへ、ありがとうございまーす！｣とへらへら笑われ私の方が面食らってしまう。｢褒めてないけど｣と慌てて付け加えるが、彼はまるで気にしない様子だ。そもそも何故チーノくんが二年の廊下にいるんだろう。誰かに呼び出されたのだろうか。上級生にまでモテてんだ、そりゃモテるか。と無意味な自問自答を終わらせ、｢それじゃ｣と踵を返す。しかし彼は、立ち去ろうとする私の後を追ってきた。
｢ねえ待って、聞ーてくださいよ先輩｣
｢な、何｣
｢俺まだ、肝心な好きな子からは貰えてないんですよね｣
｢へー、…そんな貰っといて｣
彼の手にした紙袋ががさがさと揺れる度に、苛立ちが募る。廊下を曲がり階段を駆け降りながら、つい強い口調になって応酬を繰り広げる。
好きな子から貰えないのは、チーノくんがそんな八方美人してるからじゃない？え〜！俺結構一途ですよ？そうは見えないもん。先輩も知ってる人なんだけどな〜。知らない。冷たい！…チョコ、くれないんですか？も、もうしつこい…好きな子からしかいらないんでしょ！
｢ 好きな子からしかいらないですよ ｣
気づいたら、目の前は行き止まりだった。一階の階段下倉庫の前で已むなく立ち止まると、背後からチーノくんの腕がすっと伸びてきて扉に両手をつかれる。一瞬息が止まる。いとも簡単に腕の中に閉じ込められてしまった、誰も立ち寄らない薄暗い死角で、こんなドラマの中でしか見たことのないような体制で。｢先輩｣と耳元で甘く囁く声が、いつもの彼の明るくて人懐っこい感じとは全く違っていて頭が混乱する。やめてよ、ねえ、どうして追ってくるの。好きな子って、誰なの。なんて、素直に訊けてしまえたら楽なのに、ここまで気のない態度で逃げ惑ったが故に軽々そうしてしまえずにいる。でも、どうして、私だけじゃない。チーノくんだって素直じゃない。私の気持ち、全部わかってて何も言ってくれないの、狡いよ。頭の中で八つ当たりをかましていると、もう一度、彼が私のすぐ耳元で囁いた。
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うろせ。(プロフ) - Kaniskaさん» 激励のコメントありがとうございます❀.(*´ω`*)❀.そのお言葉だけで次回の更新も頑張れます…！引き続き楽しんで頂けましたら幸いです。 (2022年1月5日 23時) (
レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
Kaniska(プロフ) - エンゼルウィング、とても好きです…最後の説明の一言で、もう心臓をやられました。ほんとうに好きです。更新頑張って下さい (2022年1月2日 21時) (レス) id: 83384417ab (このIDを非表示/違反報告)
うろせ。(プロフ) - ゆうなさん» コメントありがとうございます(❁´ω`❁)季節外れのバレンタインネタでしたが、楽しんで頂けたようで光栄です。引き続きよろしくお願い致します！ (2021年11月24日 17時) (レス) id: 0cdd3406db (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - きゃー！！！！！！！！！！！！！新作おめでとうございます！！！そしてありがとうございます！初っ端からciくんのお話でバレンタイン！夢主とciの会話が甘々で可愛いぃぃ！！これからも頑張ってください！！！！！！！！ (2021年11月5日 2時) (レス) @page2 id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うろせ。 | 作成日時：2021年11月4日 17時
