【はたらく細胞】Eccentrics (ページ4)

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Three ページ4

例の抗原を葬り去って、少し経った頃｡
記憶細胞は散歩をしていた｡
もちろん今は抗原の記録という仕事の合間のちょっとした休憩中だ｡サボっている訳ではない｡
「あ……」
ここら辺はこの前の一般細胞の家の近くだと、記憶細胞は気づいた｡
意図して歩いてきた訳ではなかったが、自然と足がそちらへと向かっていたようだ｡
記憶細胞はふっと笑った｡自分は相当“彼”と話すのが楽しみであるらしい、と｡
自身の足が赴く方向へと素直に身を任せた｡

記憶細胞はショックを受けていた｡
遠目で目的地を眺めていたため、もしや、とは思っていたが｡
1歩近づく度にそれは確信へ変わっていった｡
今日は一般細胞がベランダに出ていない｡
わくわくした気持ちがあった分、落胆する気持ちもそれに比例して大きかった｡
記憶細胞とて分かってはいるのだ、一般細胞にも仕事があることを｡毎度ベランダに出ているとは限らないことも｡
記憶細胞は沈んだ気持ちを抱えたまま、今来た道をUターンしようとした｡
「あれ?記憶細胞さん? 」
聞き覚えのある声にすぐさま振り向くと、やはりそこには一般細胞の姿があった｡
「もしかして休憩中ですか?私は今から休憩に入るところなんですけど、よかったらちょっとお話しませんか? 」
凄く楽しみにしてたんですよ、記憶細胞とまたお話できるの!あ、でも仕事中ですか?それなら申し訳ないですね……｡
記憶細胞には一般細胞の言っている内容が途中から入ってきていなかった｡
一般細胞とまた会えたことに喜ぶあまり、耳から耳へと情報が流れていくのだ｡
黙っている記憶細胞に気づいた一般細胞は、話しかけるのをぴたっと止めて様子を伺った｡
そのことにすら気がつかず何も言わない記憶細胞に、一般細胞は焦りを感じていた｡
自分は何か記憶細胞を怒らせるようなことを言ったのだろうか｡
だけど心当たりなんてまったくないんだよな……｡
それもそのはず、一般細胞は記憶細胞の気に障ることなど何もしていないし、言っていないのだから｡
意を決して一般細胞は大きな声を出した｡