Four ページ5
「あ、あの! 」
さすがの記憶細胞もこの声で現実世界へ帰ってきた｡
見れば一般細胞が困惑の表情を浮かべているではないか｡一体何があったのだろうか｡
「記憶細胞さん、何か怒っているなら謝ります｡だから原因を教えてもらえませんか?言ってもらわないと分かりません」
あ、でもできればお手柔らかに……とつけ加えて、一般細胞は口を閉じた｡
対して記憶細胞は何故一般細胞がそんなことを言い出したのか、さっぱり分からない｡
まあ、一般細胞が黙っていたことにすら気づかなかったのだ｡自分が何をしでかしたかなど、記憶細胞には到底見当もつかないだろう｡
「俺は怒ってないぞ? 」
「本当ですか? 」
「本当だけど……どうして? 」
「だって記憶細胞さん、ずっと黙ってたから」
「あー……ごめん、考え事してて」
まさか舞い上がりすぎてろくに話を聞いてなかったとは言えない｡口が割けても……いや口が割けたらそもそも話せないのだが｡
記憶細胞は少し安心していた｡
自分の顔が怖くて怒っていると勘違いされたのかもしれないと一瞬考えたからだ｡それではお話どころではない｡
それを聞いて一般細胞もほっとしたように胸に手を置いた｡
「もう、おどかさないでくださいよ!ひやひやしたじゃないですか! 」
記憶細胞はけっしておどかさそうとは思っていなかったのだが、今回はそう思われても致し方ないだろう｡
「そうだ!記憶細胞さん、この間の事件のことを聞かせてくださいよ」
「この間? 」
「抗原が出たからって青いキャップの方と現場に向かったんですよね?ここら辺じゃなかったのはありがたかったんですけど、記憶細胞さんが出動したっていうからどうなったか気になってて」
「ああ、あの時の｡実は……」
その後、休憩時間ギリギリまで楽しく会話を弾ませた2人であった｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年3月8日 17時
