Twelve ページ13
ピンポーン｡
インターホンを鳴らすと、ガチャッと目の前のドアノブが回る｡
いらっしゃいませー、とまるで店員のようにAは記憶細胞を部屋に通した｡
「狭苦しい所ですけど、くつろいでってください」
今、お茶淹れますから｡
そう言ってAはパタパタとキッチンの方へ向かった｡
記憶細胞は悪いと思いつつも、Aの部屋を見回した｡
一般細胞の部屋を訪れたことなどない記憶細胞｡他の細胞の部屋とどう違うかは分からなかったが、きちんと整理整頓された空間からAの性格が感じられた｡
「お待たせしましたー」
カップがテーブルに置かれてカチャンと音を立てた｡
「記憶さんがくるから頑張って片付けました」
「前見た時も結構きれいだったぞ」
「本当ですかー?じゃあ、外から見える所だけきれいにしてて正解でした」
Aはカップを持ち上げて中の紅茶を静かにすする｡
ホッと一息つき、幸せそうな表情を浮かべる｡
「この紅茶、だいぶ前に赤血球さんが持ってきてくれたんですけど｡あんまり美味しいからちょっとずつ飲んでるんです」
「なあ、A」
「記憶さんも是非飲んでみてください!でも記憶さん、舌肥えてそうだからなあ｡気に入ってもらえますかね? 」
「A、あのさ」
「またお願いしたら配達してもらえるんでしょうか?今度聞いてみようっと」
「A! 」
記憶細胞の呼びかけに応えず、一方的にひたすら語っていたAだったが、初めての記憶細胞の怒ったような声にヒュッと息を飲んだ｡
なあ、と言った記憶細胞に少しAはビクつく｡
その様子を見た記憶細胞は自分がAを怖がらせていると知り、苦笑いを浮かべた｡｡
「ごめん、びっくりさせるつもりじゃなかったんだ」
Aは黙ったまま、首を縦に動かした｡
「Aが言いたくないなら無理にとは言わない｡でも」
そこで言葉を切り、続きを言うか言うまいか少し悩んだ｡
記憶細胞は再び言葉を紡ぐ｡
「俺はAのことが知りたい」
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年3月8日 17時
