マ ページ1
「もう俺からみんなを奪わないでよ!!!!」
聞き慣れないキンとした声が食堂に響き渡る。
先ほどまでざわついていたはずの食堂が一瞬静寂に包まれる。しかし次の瞬間にはなんだ今の声は、誰の声だよ、と特定が始まるあたり流石NRCである。
「えーっと…先輩どうしたんスか?」
目にハートのメイクを施した彼がそう言うというと彼らの注目が一点に集まる
____________彼だ。
男共は目を見張る
あのキンと高く、悲痛な声の主はなんといつも困ったような笑顔を浮かべ、憂え気な顔をしていた彼であった。今はその影もなく今の彼の目にはこれでもかと涙を溜めていて顔は憤怒に染まっている。
グリムは恐ろしさのあまり食べていたデラックスカツサンドを床に落として「ふなぁ…」と情けない声をあげた
「…お″ッ、俺″っ、いやッ、“私”はお父様の命令で無理やり男子校なんかに通わざれでっ、手入れしてた髪も切ったし、したくもない男装までしてるのにっ」
「か、監督生は髪だって切ってないし、スカートまで履いて、挙げ句の果てに私の友だちまで奪って…!」
「オマエは私から何もかも奪って…!ずるいよ!!」
ぼたぼた、と涙を零しはくはくとそう言う彼の顔は悲痛そうに歪められているが目だけはしっかりと監督生の方向に見据えられており、監督生は目を見開いた
アイツ女だったのか
2年間も男子校にいたのか…?
男装…!?
ツイステッドワンダーランドは女性を重んじる世界だ。
淑女第一
エレメンタリースクールで最初に習う言葉だ。
テメーが今息吸えてんのは母ちゃんがいるからだよ、女性がいなきゃ俺らは存在すら許されなかったということを痛感しているからこその言葉である
妊婦さんがいれば席を譲るのは当たり前、女の子の日になりゃあこれでもかと労わる。性的暴行云々なんてものは言語道断。首チョンパで済むのならまだ優しい方であって夕焼けの草原辺りの地方はそれ以上に酷い刑を課される。そのくらい女性は尊ぶべき存在なのだ。
NRCだってそれは変わらない。流石の野次馬達もどよめきだすに決まっている。
そして男共は思う
“可哀想に”
にっくきRSAの奴らみたいで嫌だったが、悲痛そうな声を出しながら泣く彼女を見るとそう思ってしまう。
我慢していたんだ、ずっと。
聞きたくもない親の命令に従って。
命よりも大切な髪を切って。
友達まで奪われて。
彼女は紛れもない悲劇のヒロインだ
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作者名:俺 | 作成日時:2020年11月20日 18時