▼ ページ14
●前世
知らない。
前世の記憶は彼の記憶から完璧に抜け落ちている。
強いて言えば"赤"しか残っていない。
まあ家族も自分も滅多刺しなので、それ残るのも納得だろう。
もうひとつ、
昔はその人物が誰なのか知りたくて、頑張って探していたが、今となってはどうでもいいと思ってる。
もう何年も経ち、転生しているだろうと振り切ってるそう。
まあ、前世の自分の名前なのですが、それは置いておこう。
●名前
白夜とは、真夜中になっても薄明になっているか、または太陽が沈んでも暗くならない現象のこと。
"御雪白夜"という名前には、皆の穢れ汚れを洗い清め、常に皆を照らしてくれるような、そんな子になって欲しいという意味があるのだとか。
本当に何百年前とかに聞いただけなので、あまり正確に覚えていない。
こんなんだったっけ……くらいの感覚、主観あり。
名前の由来など気にしていないので、本人は聞くつもりは一切無い。
●過去
昔はもう少し純粋で素直な子だった。
百鬼さんにも同期にもくん付け、さん付けをしていた。
同期のことも百鬼さんのことも、とても好きだった。
昔から百鬼さんのような立派な獄丁になりたいと思うと同時に、自分と同じように獄丁を目指す同期のことを不安に思っていた。
どうしても、大好きな同期が傷つくのは見たくないな、と思ってしまう。
余計なお世話、だってわかっていても。
獄丁になってからもそういう思いは変わらず、むしろ仕事中に会う人々のことも思ってしまうように。
それが白夜を苦しめることとなった。
幸せが崩れるのは一瞬である。
亡者によって起こされたこの惨状を、白夜は許せなかった。
亡者を捕らえたあとでもやはり感情は変わらない。
あまりにも感情が乱され、何もかもが狂っていたこの時は、頭に血が昇っていて、周りもよく見れていなかった。
同期の心配してくれたそのちょっとした一言がなぜか癪に障り、その感情が全て同期にぶつけてしまう。
胸ぐら掴んで罵詈雑言。
手まで出しかけた時に百鬼さんに止められる。
この時に初めて百鬼さんに叱られ、またその時の同期を見てで改めて。
涙が溢れ出た。
自分の馬鹿げた思いで、考えで、感情で、ここまでも周りを乱してしまう。
やはりこの感情は要らなかったんだ。
だから仕事に私情は挟まない。
だから彼は"自分"を押し殺す。
仕事にあの感情を入れないように。
これ以上、辛い思いをしないように。
……結局自分勝手、だから嫌い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
